第四章
[8]前話
「けれど今回乗ってみてね」
「気が変わったか?」
「そうなる?」
今度は祖父に答えた。
「正直なところ」
「乗りたくなったか?」
「というか隣に誰か乗ってもらって」
「それでか」
「運転したいなって思ったわ」
こうした考えになったというのだ。
「どうもね」
「そうか、じゃあ今度乗る機会があればな」
「誰か乗せてね」
そうしてというのだ。
「運転したいわ」
「そうか、じゃあまたな」
「ええ、機会があればだけど」
「誰かに横にいてもらってか」
「そうしたわ、ただ今回一人で運転して」
そのサイドカーをである。
「思ったけれどサイドカーはね」
「二人で乗るものだな」
「そのことがわかったわ、友達でも誰でも」
それこそというのだ。
「誰かと一緒に乗る」
「そうして走るものだよ」
「そのことはわかったわ、じゃあ今は」
最初のカレーを食べ終えていた、自由軒名物の御飯とルーを最初から混ぜてあって卵と一緒に食べるカレーをだ。
「二人分、いえ三人分食べるわ」
「再度カーに乗ったのにか」
「そう、三人分ね」
それだけというのだ。
「食べるからね」
「やれやれだな、しかし参加してもらったからな」
だからだとだ、祖父も困った笑顔になりつつこうも言った。
「好きなだけ食え」
「それじゃあね」
「じゃあ私達は自分のお金で食べるから」
「お祖父ちゃん安心してね」
「孫に金を出させる祖父ちゃんがいるか」
祖父は千里の姉達、つまり自分の孫達に言った。
「御前等も好きなだけ食わせてやる」
「そう言うの?」
「私達レースに出てないのに」
「応援していたら同じだ、だからだ」
好きなだけ食えとだ、祖父は結果として三人の孫全員に告げた。そうして自分もカレーを食べた。そのカレーは実に心地よい味がした。
サイドカーで 完
2017・6・26
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