第三章
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「出来ればね」
「完走ですか」
「いや、楽しんでくれるかな」
こう千里に言うのだった。
「レースをね」
「それじゃあ」
「うん、そうしてね」
「わかりました」
千里は体面上こう答えたが実はどうしても今回のレース果たして上手に運転出来るのか不安だった。だがその不安を隠してだ。
レースに出た、姉達はその妹を見て話した。
「頑張って欲しいわね」
「折角出るんだしな」
「箸ってその後は」
「カレーがあるんだしね」
「あいつ食うけれどな」
男子高校生並だ、祖父もこのことを知っている。
「けれどな」
「それでもよね」
「レースに出てもらったから」
嫌なのにとはだ、姉達もいなかった。傍に本来出る筈だった今は怪我をしている人がいるからだ。
「だからね」
「カレー位はよね」
「ああ、何杯でも食わせてやるさ」
そのカレーをというのだ。
「自由軒のカレーをな」
「じゃあ千里ちゃん応援しましょう」
「今から皆でね」
姉達は千里を応援する為に旗を持って来ていた、見ればその旗は朝日の出を表す旭日旗であった。
その旗に応援されて千里は走りはじめたが。
やはり重い、横の車の分だけ。思ったよりスピードが出ないし小回りも利かない。
このことに困ったがだ、不意にだ。
その車の部分、今は空席のその場所を見ているとだ。
不意にそこに誰かを乗せて走りたくもなった、しかし今はいない。
そのことを思いつつ大阪市を走っていった、そして。
無事にレースを終えた、幸い千里は怪我をすることもなく完走出来た。そしてゴールして祖父と姉達本来出る筈だった人に迎えられてだ。
千里は祖父と共に自由軒のカレーを食べに行った、姉達も一緒だった。
店の中で四人でカレーを食べつつだ、千里は祖父と姉達に言った。
「何かね」
「何か?」
「何かって?」
「サイドカーって確かに重くて小回りが利かないけれど」
千里が苦手と思ったこのことを話した。
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