第一章
[2]次話
魔女から聖女へ
梅田蜜は駆け出しの医師にして優秀な大学院生である。肩書だけ書けばこうなるが彼女には恐ろしい問題があった。
白衣の下はいつもきわどいミニスカートとガーターストッキング、それにヒールという服装で顔立ちもスタイルも色気があるという言葉を通り越して淫靡ですらある。年齢以上の色香がかそこにあった。
だから誰もがもう老若男女誰もがだ。
「見ているだけで」
「何かたまらなくて」
「声をかけたくなるよな」
「それで出来れば」
「交際とか」
こう言うのだった、理知的な紳士である教授もだ。
蜜と共にいた後信頼している助手にだ、こう漏らすのだった。
「私も理性には自信があった」
「あった、ですか」
「そう、あっただよ」
言葉は過去形だった。
「わかるね」
「梅田君を見ていますと」
「常にね」
「理性が抑えられなくなりますか」
「あそこまで強烈な色気だと」
それこそというのだ。
「我慢出来なくてね」
「ついついですか」
「許されないことをしてしまいそうになる」
そこまでだというのだ。
「いけないことだとわかっている」
「思われるだけでも」
「本当にね」
「それは私もです」
助手も言うのだった。
「新婚で妻を愛しています」
「しかしだね」
「はい」
こう教授に答えるのだった。
「どうにも」
「理性で本能を抑えるのに必死になる」
「そうなってしまいます」
「私と一緒か」
「むしろ私の方が教授より若い分」
理性で本能を抑えることにというのだ。
「苦労しているでしょう」
「そうなのだね」
「これは戦いです」
助手は太宰治の様なことも言った。
「彼女を見ていますと」
「そうなるね、しかもこれはだ」
教授は助手に深刻な顔で話した。
「私達だけではない」
「医学部のどの先生もですね」
「学生諸君もだよ、いつも声をかけられるとのことだ」
「むしろ声をかけただけで済むとは」
「奇跡だよ」
「全くだ、理性が勝っているということなのだから」
そう判断していいからだというのだ。
「それで済んでいるのなら」
「学生諸君も理性的ですね」
「あの外見にだ」
顔、そしてスタイルにというのだ。
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