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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十六話 苦悩
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な軍事力が要る、そういう事だろう。力なき正義など何の意味もない」
俺の言葉にケスラーが、クレメンツが頷いた。問題なのはその軍事力が無い事だ。軍は今再建途中だ、とても国内の貴族達を敵に回してリヒテンラーデ侯を助けることなどできない。ましてカストロプの一件がリヒテンラーデ侯の考えのもとに行われたとすれば協力などもってのほかだ。俺としても彼に協力するなど御免だ、あの男の所為でヴァレンシュタインが敵になりキルヒアイスは死んだ……。
もどかしい事だ、俺に力が有れば、俺に権力が有ればと思ってしまう。皇帝になりたいと思った、皇帝になれると思った。それほどたやすい事ではないとも知った。そして俺に皇帝になる資格が有るのかとも悩んだ。
だが今は力が欲しい、何者であれひれ伏すだけの力が。そうであれば国内を改革し反対するものを叩き潰し帝国を一つにまとめる。そうなればヴァレンシュタインとも互角以上に渡り合えるだろう。
それには最低でも宇宙艦隊司令長官の地位が要る。つまり武勲を挙げなければならない……。そして今の帝国は戦争が出来るような状態ではない……。堂々巡りだ、出口が見えない。もどかしさだけが募っていく。
ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯がどう考えているのか……。改革の意志があるのか、無いのか……。皇帝位を望まなかった事を考えれば単なる権力亡者ではないのだろう。現状をどの程度正しく認識しているのか、そしてどう展望を持っているのか……。
「メックリンガーが言っておりましたな。かつて革命で滅びた専制国家が何故改革を行う事で延命を図らなかったか不思議だった、だが今の銀河帝国を見れば何となく分かる様な気がする、と。改革を行いたくても出来なかった、人を得なかったか、地位を得なかったか、或いは時を得なかったのか……」
時を得ていないし、地位も得ていない。いっそオフレッサーを担いで改革を推し進めるか……。難しい事ではある、しかしオフレッサーもこのままでは帝国が崩壊するとは理解しているだろう。
俺が率いる三万隻、オフレッサーが率いる三万隻、計六万隻をもってオーディンへ進撃する。リヒテンラーデ侯、エルウィン・ヨーゼフを排し国政を改革すると言えば兵の士気も上がるだろう。幸いオフレッサーは装甲擲弾兵総監でもある。オーディンを制圧するのは難しくない。
ブラウンシュバイク、リッテンハイムの両者、或いはどちらかと手を組む。そしてどちらかの娘を皇帝にし改革を推し進める。嫌がるかもしれんが、成果が出れば渋々ではあれ受け入れるはずだ。
問題はそれ以外の貴族達だろう。何かにつけて不満を漏らすだろうが不満を漏らす奴は容赦なく潰す。それによって政府の力を強め、平民達の支持を維持する……。場合によっては大規模な内乱に発展するかもしれない、上手くいくだろうか…
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