第一章
[2]次話
大和撫子の胸
天王寺のりは生け花と日本舞踊が趣味でありしかも得意としている。尚且つ料理上手で優しい性格から数少ない大和撫子とさえ言われている。だが。
友人達はのりの童顔とツインテールの髪型だけでなくその胸を見てだ、こんなことを言うのだった。
「顔と髪型は大和撫子じゃないし」
「特に胸はね」
「何よその西瓜入れたみたいな胸」
「物凄い爆乳じゃない」
「胸をことを言われたら」
困った顔になってだ、のりは友人達に言い返すばかりだった。
「私だってね」
「仕方ない?」
「そう言うの?」
「今だって」
今は体育の授業中だ、上は白い体操服で下は赤い半ズボンという通っている学校の体操服の恰好だ。
「身体動かす邪魔になって」
「その邪魔ってのは何なのよ」
「邪魔になる位大きいって」
「それ自体がもう信じられない」
「巨乳はそれだけで宝よ」
「巨乳は七難隠すってね」
中にはこんな造語を出す者もいた、とかくのりのその胸は周囲の羨望の的だった。だが。
本人はその胸についてだ、こう言うばかりだった。
「大きいと着物着た時もね」
「苦しい?」
「そう言うの?」
「そうなんだけれど」
こう周囲にも言うのだった。
「日舞やる時も生け花の時にも着物着る時あるのに」
「何度も言うけれど羨ましい悩みっていうの」
「のりちゃんみたいに胸大きい娘滅多にいないから」
「一五八センチの背で九二センチの胸って何よ」
「凄い過ぎるでしょ」
「そう言われても」
やはり困った顔で返すのだった。
「胸は自然に大きくなったから」
「大きくなって欲しいと思ってなくても」
「自然にっていうのね」
「大きくなったって」
「そう言うのね」
「そうなんだけれど」
実際にその童顔を困ったものにさせて言う。
「私としては」
「それで小さくなって欲しいっていうの?」
「ひょっとしてだけれど」
「そう言うの?」
「そうしたことは思わないけれど」
あるものがなくなって欲しいとまでは思わないというのだ。
「けれど重いから肩も凝るし」
「いや、肩凝るって」
「重りになってるっていうのはわかるけれど」
「つまりそこまで大きいってことじゃない」
「それもびっくりだけれど」
「とにかく大きくても」
その胸の持ち主としてはというのだ。
「そんなにいいものじゃないから」
「そんなもの?」
「どうにかなって欲しい」
「そうなの」
「ええ、揺れなくて着物の邪魔にならなくて肩凝りもない」
全て巨乳であるが故ののりの悩みだ。
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