輪入道 前編
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ちが反乱を起こした。子供たちは俺の意識の裏側に隠れ、鎌鼬を利用して奉を討ち取ったのだが…飛縁魔の機転で一命をとりとめたのだ。
俺からすれば奉は飛縁魔にものすごい借りを作りっぱなしなのだが、奉も飛縁魔自身も、大して気にしていない様子なのだ。あの二人は一体、どういう関係なのだろうか…。
いや、そんなことは今はどうでもいいんだ。
『この術に関してだけは俺は玄人だ。安心していい』
「…分かったよ。小梅が怖い思いをしないで済んだならそれでいいんだが…」
目が覚めたら母子が浮かぶ水槽が林立する部屋の真っ只中とかトラウマものだからな。
「で、俺はどうすればいいんだ」
『あぁ、怪我さえしなければ好きにしてていいよ』
「は!?」
『お前をそっちに送り込んだのは、場所を特定するためだ。あと小梅ちゃんに怖い思いをさせたくないからねぇ。…すぐ迎えに行くから、適当に時間を稼いでおけ』
「そんな呑気なカンジでいいのか?」
『大丈夫だ。今回の件が変態センセイの仕業だとすれば、少なくとも今回は殺されることはないよ』
「何で云い切れるんだ?」
『これは恐らく≪予告≫だねぇ。標的を変えるぞ、という』
奉の話によると、こうだ。
殺せない奉を黙らせる方法を、変態センセイは思いついた。
奉にとって大事な、かつ無力な人間を標的とする。その人間を自分はいつでも殺せる、と示すことにより、奉を無力化する方法をとることにしたのだ。今回の拉致は威嚇だろう。余計な事を話せば、いつでも小梅を葬る…という。
「身辺調査の結果、次のターゲットが俺の姪っ子とか気持ち悪過ぎだな」
『本当に、気持ち悪いねぇ』
「お前の事を云ったんだよ。…で、俺は本当に何もしなくていいんだな」
『そうだねぇ…まぁ、折角敵地に潜入しておいて、何もしないのも芸がないから』
言葉を切って、奉は喉の奥で笑った。
『嫌がらせの限りを尽くして来い。…あのガキ二度と攫うものか、と後悔する程にねぇ』
「―――了解」
俺も、少し笑っていたかもしれない。
かちり、と鍵が回る音がした数秒後、部屋の灯りがついた。暗闇に慣れた目に突き刺さるようだ。俺は思わず目をしかめた。
「おや、もう泣いている頃だと思ったのに。強い子だね」
注射を我慢した子供を褒めるような口調で、小柄な医師が微笑んでいた。
―――洞で見たのと同じ、人の良さそうな微笑で。
部屋の灯りは、他の病室と全く同じ規格の蛍光灯。その変わらなさが逆に病的な印象を与える。母子を殺して水槽に沈めている事にも、小梅を攫ったことにも、一片の後ろめたさも感じていないのだ、この男は。
蛍光灯の白光を跳ね返すように光る白衣が、それを更に裏付けている。
医師はもう一度、俺の顔を確かめるように覗き込んだ。
「君は、寝ている間に病院に迷い込んでし
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