輪入道 前編
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る場所を見回した。
先ず、目に入って来たのは緑色の非常灯。それが一番明るい光だった。非常灯があるということは、ここは何らかの大きな施設に違いない。学校か、役所か、商業施設か、それとも。
……病院、か?
鼻を刺すような消毒薬と、色々な薬品が入り混じる匂い。これは病院なのか?いや、それにしては人の気配がなさすぎる。この臭気も病院というよりは、理科準備室のほうが近い。ホルマリンに漬けられたフナの解剖体とかがずらっと並べられていそうな。俺は素早く瞬きをして、暗闇に目が慣れるのを待った。幸い、ぼんやりだが非常灯と…部屋の外から差し込んでくる光が、部屋の中を僅かに照らしていて、まるっきりの暗闇ではない。…やがて、部屋の中に林立する円筒形の…これは…まさか。
「うぇ!?」
とんでもない高い声が出た。
部屋の中に林立するのは円筒系の水槽だ。そしてその中に揺らめくのは………何という事だろう。
へその緒で繋がれた、母子の亡骸。それが一組ずつ、水槽の中に納められていた。
これ、あそこじゃん…あの変態センセイの趣味のお部屋じゃん…!!
「まじかい…!」
自分の口から洩れた、妙に高い声にもびびった。まるで声変わり前のようだ。…奉は俺に何をした!?ヘリウムガスとか吸わせたのか!?
他には…他には何かされてないか!?俺は自分の体をキョロキョロ眺めまわした。
「っあ――――!!!」
ピンク色のフリルのパジャマを着せられている―――!!お、おい奉、お前この非常時に俺に何をさせたいんだ!?
「…ぅおい奉!コレなんだ、お前なにふざけてんだ!!」
『心外だねぇ、お前なにか勘違いしてないか』
頭の後ろ辺りから、囁くような声が聞こえた。ばっと振り向いたが、そこにあるのは不吉な母子の亡骸のみ。今更になって鳥肌が全身をびっしり覆った。
「くっそ…何処だ奉!!」
『洞に居るよ。お前の聴覚の一部だけ、少し≪こちら≫に残しておいた。そこは何処だ?』
「知らないんかい!変態センセイの趣味のお部屋深夜バージョンだよ!!」
『何それエロい』
「ふざけんな!!お前コレ何の嫌がらせだ!?」
『なるほどねぇ。そうきたか変態センセイ』
奉の声が少し途切れた。
『とりあえず聞け。…今のお前は≪小梅ちゃん≫だ』
「何云ってんだ殺すぞ」
『冗談で云ってんじゃねぇよ。簡単に云えば…お前と、小梅ちゃんの意識を入れ替えた』
―――なんだと!?
『犯人は分かれど監禁場所が分からない。ならば、お前を偵察に出すのが手っ取り早いだろうねぇ』
「そっ…そんなこと出来たのか!?」
『出来るよ。出来て、何度もやってきたからこの間の鎌鼬騒動が起こったんだろう』
―――今年の夏。
玉群の子供を贄にその意識を乗っ取り、転生を続けた奉に、体を取られた子供た
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