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提督はBarにいる。
キスの味はさくらんぼ?・その1
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う言いながらニコニコと笑っている。

「お、って事は好きな男でもいるのか?ん?」

 荒潮が歌っていた大〇愛の『さくらんぼ』は、ラブソングだ。今の満ち足りたような笑顔を見る限り、誰か好きな相手を思い浮かべて歌っていたように見えたんでな。

「あ、あらあら?どうしてそんな事言うのぉ〜?」

 荒潮は俺に言われた事に焦ったのか、酒で少し赤くなっていた頬を更に赤く染める。その慌てぶりから見ても、ますます怪しいな。まぁいいさ、その話は追々、酒の肴にでも聞くとしようか。





「さぁてと、荒潮……どっちが飲みたい?」

 俺はそう言って、カウンターの上にガラス瓶を2つ、ドンと置いた。

「あらぁ?何これぇ」

「これか?これはどっちも『チェリーブランデー』と呼ばれる代物だが……実は中身は全くの別物だ」

 世界的に見ても、チェリーブランデーと呼ばれる酒には大きく分けて2種類があり、その作り方も味わいも大きく違う。1つは本格的なブランデーの作り方をしたもの、そしてもう1つは、梅酒のようにブランデー等のスピリッツにサクランボを漬け込んで味や風味を移した物だ。

 そもそもブランデーってのは『焼いたワイン』ってのが名前の由来で、ブドウの醸造酒……つまりはワインを蒸留・熟成させた酒だ。これはつまり、ブドウのように甘く醸造酒に加工が出来る果物であればブランデーに仕立てる事が出来るという事になる。これらはフルーツブランデーと呼ばれ、リンゴやスモモ、ミカン、木苺等から作られる事が多い。中でもサクランボは有名で、『キルシュヴァッサー』等の有名なボトルが多い。

 同じくチェリーブランデーと呼ばれている酒にはもう1つの作り方がある。先程も言ったが梅酒に良く似た作り方の酒だ。どちらかというとリキュールに近いんだが……何で同じ名前になったかまでは定かじゃねぇ。ベースとなるスピリッツにサクランボと砂糖、隠し味程度にハーブや柑橘類等と漬け込む事が多く、有名なボトルとしては『チェリー・ヒーリング』がある。ウチで仕入れてるのは有名所の『キルシュヴァッサー』と『チェリー・ヒーリング』だ。



「ふ〜ん……どういう飲み方が美味しいの?」

「そうだな……『キルシュヴァッサー』はストレート、『チェリー・ヒーリング』はカクテルかな」

 『キルシュヴァッサー』は蒸留酒であるために度数が高い。しかしそのサクランボのいい香りや爽やかさを活かすにはカクテルよりも水割りやストレートで酒自体の味を楽しむのに向いている、と言えるだろう。本場ドイツのシュヴァルツヴァルト地方ではキルシュヴァッサーをストレートで飲んだ後に、ビールをチェイサーにして腹の中のアルコールを希釈してやるんだ。キルシュヴァッサーはサクランボの甘味と酸味が前面に出てくるが、後味
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