第七章
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「それがああしてお墓から出て誰彼なく襲って殺して血を吸ってでしたから」
「服も死に装束で夜でも昼でも出てね」
「そうだとは思いませんでしたから」
「それが現実の吸血鬼だって言ってね」
「本当に東欧の吸血鬼はああなんですか」
「そうみたいだよ」
マネージャーが聞く限りではだ、彼は吸血鬼の知識はそれ程ではないのだ。だからそうなのだろうというのだ。
「どうやらね」
「そうですか」
「うん、だからリアリズムだとね」
「ああなったんですか」
「そうだよ、さて映画の評判はどうかな」
「凄いお金と時間かけましたね」
「徹底的に凝ってね、けれどね」
制作に必要な予算と時間それに技術や才能、情熱も注ぎ込んだ。このことは紛れもない事実である。
だが、だ。マネージャーは彼が知る現実から言うのだった。
「それがいいとは限らないからね」
「えっ、そうなんですか?」
「まあ作品の評判は蓋を開けてだし」
「蓋を」
「それで人がどう思うかだよ」
観る人がというのだ。
「それからだから」
「あの、何もかも凄く凝ってましたけれど」
美優は十代の少女の現実から話した。
「それでもですか」
「まあ当たればいいけれど」
「絶対に当たりますよ、あれだけすれば」
「それは公開してからわかるよ」
「そうですか」
「そこからね」
マネージャーの顔は難しいものだった、そして。
公開となるとだ、観た者達はこう言った。
「いい作品だけれどな」
「演出も音楽も衣装も凝ってて」
「俳優さん達もいい」
「時代考証しっかりしてるな」
「日本の吸血鬼だとこうなるんだな」
「結末も印象的だよ」
まずはこう言う、しかしだった。
それと共にだ、彼等はこうも言った。
「思っていたのと違うな」
「随分不気味で怖い吸血鬼だったな」
「全然奇麗じゃないぞ」
「怖いだけだぞ」
「不知火検校の女バージョンって思っていたら」
横溝正史の作品だ、モチーフはあのドラキュラ伯爵だ。
「全然違ったぞ」
「美優ちゃん使ったのに何だよ」
彼女のファンが特に言った。
「随分怖かったぞ」
「というか怖いだけだよ」
「美優ちゃんあんな風にもなれるんだな」
「メイクや衣装や演技を変えるとああなるんだな」
「元々演技力あるけれど今回特に凄かったな」
「新境地だよな」
美優はいいというのだ、この辺りファンだけはあった。
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