第三章
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「実際にね」
「そうですよね」
「それがね」
「こうしてですか」
「うん、そうなんだ」
「棺桶から出て優雅にじゃなくて」
「死人からね」
埋められていた墓場から這い出てというのだ。
「獣というかグールやゾンビみたいにね」
「人を襲って殺してですね」
「それも誰彼なくね」
ドラキュラ伯爵の様に美女だけというのでなくだ。
「貪るみたいにだよ」
「血を吸うんですね」
「そうなんだよ」
「そうですか」
美優はその死霊か何かにしか見えない吸血鬼姿で言った。
「私和風吸血鬼と聞いてです」
「お姫様の姿とかでだね」
「出るって思ってました」
アイドルという自分の立場からだ。
「それがこんなのですか」
「あの監督もうリアリズムを徹底的に追及するから」
「実際の吸血鬼ってこうなんですか?」
「そうみたいだよ、本場の東欧ではね」
「ルーマニアとかで」
吸血鬼といえばこの国だ、もう固定概念にさえなっている。
「そうなんですね」
「東欧ではね、こうして墓場から出てね」
「残虐にですね」
「血を吸うんだ」
相手を殺してというのだ。
「色々な種類がいるらしいけれどね」
「大体こんな感じですか」
「そうみたいだよ」
「ううん、何ていいますか」
「イメージと違うね」
「はい」
実際にとだ、美優は項垂れた感じで答えた。
「女性版ドラキュラかと思っていたら」
「美少女和風吸血鬼だね」
「お姫様の、けれど」
「これがね」
「こんなのですか」
「まあ美優ちゃんの演技自体はね」
肝心のそれはというと。
「評判いいし監督さんもね」
「いいって言ってくれてますね」
「だからね」
「そっちはいいんですね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「安心してね」
「だといいですけれど」
「だから頑張っていこう」
「わかりました、ただ地面から這い出たので」
打越はこのことも妥協せずそうしたのだ。
「お口の中に土が入って」
「あっ、それはね」
「はい、ちょっとうがいしてきます」
「気をつけてね、歌だってあるから」
「そうですよね」
「そうそう、今度新曲の収録もあるし」
マネージャーは美優にアイドルとして女優業と同じかそれ以上に重要な仕事のことも話した。
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