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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十四話 訓練
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認できているのですか?」
参謀長がきまり悪げな表情を浮かべた。
「いえ、確認は出来ていません」
ヴァレンシュタイン司令官の眼が僅かにきつくなった様に見えた。
「二十四時間の待機は二十四時間の休息ではありません。奇襲を受け損害を出した艦隊が再編するのに二十四時間を必要とする、そういう事です。再編中に周囲を警戒しないなど有りえません。第一、第三艦隊は敵です、これは実戦を想定した訓練なのです。総員にそれを徹底させてください、そうでないと何のための訓練か分からなくなる」
眼だけではない、声も先程までとは違う。明らかに司令官は怒っている。ミスを犯した事よりも訓練の意味が理解出来ていない事を重視しているようだ。司令官が視線を我々司令部要員に移した。皆気まり悪げにしている。
「しばらく此処を離れます。後をお願いします」
「……閣下、会議には参加いただけるのでしょうか?」
立ち去りかけたヴァレンシュタイン中将が足を止めチュン参謀長に視線を向けた。
「……私が居ないほうが話しやすいでしょう」
「ですが」
「私が会議に入るのはもう少し後の方が良いでしょうね。今入ってもプラスにはならないと思います」
「……」
さりげない口調だったがチュン参謀長を口籠らせるのには十分な内容だった。おそらく我々の意識が低すぎて話しにならないと見ているのだろう。そしてその事は自分の口から言うよりもチュン参謀長の口から言わせた方が良いと判断したに違いない。飾らずに言えば相手に出来るレベルでは無い、そういう事だ。
「怒っているのでしょうか」
デッシュ大佐が口を開いたのは司令官が艦橋から立ち去ってからだった。それまでは口を開くことを憚るような空気が艦橋に有った。
「怒っているだろうな……、それに呆れているかもしれん」
チュン参謀長の言葉に彼方此方で溜息を吐く音が聞こえた。訓練二日目で奇襲を受けている、呆れられても仕方がないだろう。しかも哨戒する場所を間違えたなど怒る以前の問題だと思っているかもしれない。そして我々の意識の低さも問題だと思っているだろう、情けない限りだ。
「ミハマ中佐、貴官はどう思う」
デッシュ大佐が問いかけると中佐はクスクス笑いだした。
「司令官閣下はそれほど怒ってはいないと思いますよ」
皆が戸惑った様な表情をした。あれで怒っていない? それは無いだろう。
「そうかな、結構きつい事を言われたと思うんだが」
「あれは注意しただけです、とても怒ったとは言えません。デッシュ大佐、司令官が本当に怒ったときは冷たく見据えられるか、笑顔になります。笑い声を上げたら最悪ですよ、皆凍りつきますから。ブリザードが吹き荒れるんです」
司令部要員全員の顔が引き攣った。頼むからニコニコしながら怖い事は言わんでくれ。想像したくな
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