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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十四話 訓練
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ドボーンが頷いている、そして面白くもなさそうな口調で話しだした。
『その通りだ、今のままではあっという間に二階級特進だ。同盟史上最年少の元帥の誕生だな』
ヴァレンシュタイン司令官が微かに苦笑を漏らした。

「ブルース・アッシュビー、リン・パオ、ユースフ・トパロウルを超えますね……。同盟史上最大の英雄、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン元帥は帝国からの亡命者か、なかなか笑えますよ」
ヴァレンシュタイン司令官が笑いだした。笑い声が耳に痛い。

『冗談を言っている場合か、お前、どうかしてるぞ、ヴァレンシュタイン』
呆れたような口調と表情だった。ミハマ中佐が二人の会話をクスクス笑いながら聞いている。良い度胸だ。

「冗談を言うことぐらいしか出来そうな事は有りませんからね。……第一特設艦隊は二十四時間、現場にて待機します」
『……了解した、こちらは先に行っている』
通信が切れるとヴァレンシュタイン司令官がチュン参謀長に顔を向けた。

「奇襲を受けた原因は?」
司令官の問いかけに参謀長の顔が歪む。無理もない、原因は碌でもないものだったのだ。
「哨戒網に穴が有ったようです。哨戒部隊の一つが担当範囲とは別の場所を哨戒していたと……。第一艦隊にはその穴を突かれました。ただ、何故そうなったかはまだ不明です」

周囲から溜息が洩れる音がした。おそらく呆れたのだろう、そしてやはりという思いも有るはずだ。哨戒部隊が迷子になるのではないかという不安は当たりはしなかったが見当はずれでもなかった。役に立たない哨戒に何の意味が有るのか……。

報告を聞いてもヴァレンシュタイン司令官の表情が変わることは無かった。目を閉じて左手で右肩を押さえ摩る様にしている。以前負傷した場所だと聞いているが痛むのだろうか?

「会議を開いて原因の特定と対応策を検討してください。急ぐ必要は有りません、二時間ほど休息を入れてからの方が落ち着いて出来るでしょう」
「了解しました」

「我々は二十四時間ここで待機することになります。乗組員には交代で休息を取らせてください、貴官達も会議終了後は交代で休息を取ってください」
「待機時間終了は明日の十五時になります。十三時には総員を配置につかせ出航に備えさせます。宜しいでしょうか」

参謀長の問いかけにヴァレンシュタイン司令官は頷いた。相変わらず目は閉じたままだ。左手で右肩を摩るのも変わらない。
「哨戒活動はこのまま続けさせてください」
「続けるのですか? 待機中ですが」

訝しそうにチュン参謀長が声を出すとヴァレンシュタイン司令官は肩を摩るのを止め閉じていた眼を開けて参謀長を見た。
「待機中ではありますが訓練を中断したわけではありません。第一艦隊が再度奇襲をかけてこないとは限らない。それに……、第三艦隊の所在は確
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