第十章
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「僕はね」
「そうか、いよいよか」
「市長選にも出るのか」
「そうするのか」
「そうも考えているよ、これから家族とも話して決めるよ」
両親と妻と、というのだ。
「今度子供も生まれるけれどね」
「そういえば君も家庭を持つね」
「そうなってきたね」
「親になるんだね、君も」
「いよいよだね」
「そうだよ」
夏樹は友人達に笑顔で答えた。
「僕も遂にね」
「父親か」
「ようやくそうなるか」
「おめでとうだね」
「全くだよ、子供も出来るし」
それならばとだ、夏樹は満面の笑顔でまた言った。
「より一層ね」
「市政に励むね」
「そしてタガメのこともだね」
「頑張っていくんだね」
「そうするよ」
是非にとだ、こう言ってだった。
夏樹は市会議員として市政に励み続けて娘も得た、そのうえでタガメのことをさらに考えていったが。そしてだ。
何とか予算を確保してだ、奇麗な水を用意した。しかしその水は。
「水槽かい?」
「水槽の水かい?」
「水槽からなんだ」
「虫を育てていくんだ」
「うん、卵からね」
その段階からとだ、彼は家で友人達に話した。その水槽は市役所にあり家の水槽には金魚が泳いでいる。
「育てていくんだ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「いや、卵は卵でもね」
それでもというのだ。
「タガメの卵じゃないよ」
「本命のだね」
「それじゃないんだね」
「ミズカマキリとかタイコウチとかね」
そうした虫のというのだ。
「卵を育てているんだ」
「まずはなんだ」
「タガメじゃなくて」
「そちらからなんだ」
「うん、やっぱり高くてね」
夏樹は苦笑いを浮かべて友人達に話した。
「それは出来なかったよ」
「確保出来た予算も僅かで」
「だからだね」
「ミズカマキリやタイコウチからだね」
「はじめるんだね」
「市政としてね、養殖をはじめることも」
それもというのだ。
「やっとだしね」
「そこまで話が進んだのもね」
「ようやくで」
「予算を確保出来たことも」
「そして卵を手に入れたことも」
「予算といっても僅かだよ」
市政の中で、というのだ。
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