408部分:第三十三話 孫策、山越を討つのことその四
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第三十三話 孫策、山越を討つのことその四
「今からのう」
「そうですね。山越をですね」
「討伐して」
「うむ、我等の長年の仇敵よ」
揚州の面々にとってはまさにそうであった。
「先代孫堅様の時からのう」
「大殿の御無念、ここで」
「是非晴らしましょう」
「あれはわしも不覚じゃった」
黄蓋の顔が怒りで歪んだ。
「わしが御傍にいながら。石弓を防げなかった」
「いえ、あれは」
「私達も」
周泰と呂蒙もそのことには申し訳のない顔になった。
「迂闊でした」
「まさか山越が石弓を持っていたなど」
「それじゃ」
黄蓋は呂蒙のその石弓のことについて話した。
「前から妙に思っておったのじゃが」
「そのことですね」
「そうじゃ。亞莎よ」
「はい」
「山越に石弓はあったかのう」
「いえ、ありません」
言葉は現在形であった。
「今もです」
「そうじゃな。山越にはそうしたものはない」
「我が国にはありますが」
「だとすればあれは何じゃ」
黄蓋は酒を飲むその手を止めて言うのだった。
「あの石弓は。そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「それを放ったのは誰じゃ」
こう言うのであった。
「しかも石弓には毒まであったのじゃぞ」
「はい、大殿は石で受けた傷から毒も受けていました」
「それもかなり強い毒でした」
「わしは山越とは幾度も戦ってきた」
伊達に古くから孫家に仕えてきているわけではないのだ。蓋は孫家の宿将としてだ。その先代の孫堅の頃から戦場にいたのである。
「しかし毒を使ったことはなかった」
「一度もですか」
「では」
「山越ではないじゃろうな」
これが黄蓋の見立てだった。
「孫堅様を殺めたのは」
「では一体」
「誰なのでしょうか」
「それはわからん」
黄蓋も首を捻ることだった。
「しかしじゃ」
「はい、山越はですね」
「我等の軍門に下しましょう」
「そしてあの者達もわし等の民とするぞ」
「はい、そして交州も手に入れましょう」
「そちらは朝廷が認めてくれますし」
ほぼ規定事項だった。山越を倒せばだ。その褒美として交州のことも任せられるということがもう決まっていたのである。袁紹の時と同じだ。
「それだからこそ」
「何としても今回こそ」
「さて、雪蓮様の戦はお見事なものじゃ」
その能力は既に天下に知られていることだった。
「わし等もやろうぞ」
「ああ」
ケイダッシュが黄蓋の言葉に応えた。
「わかっている。やらせてもらう」
「うむ、御主等にも期待しておる」
黄蓋は彼等のその顔を見て笑顔になった。
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