第六章
[8]前話
八条町の二つの商店街のどちらでもカレーについての議論は全面的に禁止となった。洋佑は八条駅の入口に書いてあったその立て看板を読んでからだった。
大学に行って美稀にそのことを話すとだ、美稀もこう返した。
「それ私も読んだわ」
「ああ、そうか」
「ええ、昨日帰る時にね」
地元住まいの彼女もというのだ。
「駅前寄ったから」
「それでどう思った?」
「多分あんたと同じよ」
「やっぱりそうなったか、か」
「ええ、そう思ったわ」
実際にというのだ。
「正直迷惑だからね」
「面白くもない芸を延々大音量で聞かされるみたいなな」
「中年のおじさんの身振り手振り交えた話を一時間半ぶっ通しとかね」
そうしたレベルだというのだ。
「シャモジ持った芸人もどきをがお家に上がり込んで御飯を漁るみたいな」
「そんな感じだよな」
「そんなのだったからね」
「そりゃ全面的に禁止になるな」
「そうよね」
「全く、常識のない人達がいるもんだ」
洋佑は呆れた声でこうも言った。
「本当にな」
「そうよね、それで今日のお昼はどうするの?」
「大学の第一食堂で食わないか?」
洋佑はこう美稀に返した。
「今日は」
「ああ、ここで食べるのね」
「あそこカレー美味いしな」
笑ってだ、洋佑は美稀にこうも言った。
「だからな」
「カレー食べるのね」
「ああ、それだよ」
その渦中の料理だというのだ。
「カツカレーか海老フライカレーかな」
「いいわね」
「流石にあの人達もここまでには来ないだろ」
「そうよね、カレーが出ていても」
「明らかに学生じゃない人が殆どだしな」
「この大学の関係者いるかも知れないけれど」
「それでもな」
「まあここには来ないわよ」
彼等がいる八条大学の食堂まではとだ、美稀は笑って言った。だがその昼にだ、二人は彼等を見た。そして一週間後大学はおろか学園全体でこの迷惑な議論はしないことになった。彼等の行いはカレーがあるなら何処でもだった。
カレーライスかライスカレーか 完
2017・3・21
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