第一章 聖者の右腕
聖者の右腕T
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
アイン・フィリーリアス。16歳。彼は現在疲れとストレスから与えられた船室のベッドに引きこもっていた。この銀髪も白髪が混じってくるかもな、と自嘲しながらこうなった経緯を思い出す。事の発端は10日前、ちょうど3月の下旬に入った頃。アインは宮廷鍛治術師として王宮入りしてからおおよそ一年が経ち、ようやく数十回に1回ほどの割合で業物と呼べる剣が打てるようになってきた。彼はヨーロッパの国々が共同で進める第三世代IS開発計画『イグニッション・プラン』の開発会議にラ・フォリアの付き添いとして護衛たちと一緒に会場に来ていた。会議自体は首相や王などの最高権力者同士で行われるので、特例でもない限り、基本的に護衛が数人入っているだけで、その王族や親族はその間互いの国の技術を見物しあう事になる。アインがここに来た目的は近接武器を見るためだった。アインが打ったことがある武器は主に剣や短剣、槍など多岐にわたる。それに剣と一言に言っても直刀やバスター・ソード、フランベルジュなどに細かく分けることができる。そんな中で彼はこれだと言える一本を作れずにいた。要はアイディアに行き詰まったため、新しい発想を得られないものか、と、この会議について来たのだ。しかし、これがすべての始まりだった。何気なく触れたISに乗ってしまえたのだ。すぐさまアインはその場を離れようとしたが他国の人間に見つかって捕縛され、EUの本部に移送された。そこで急遽行われた会議で日本にあるIS操縦者育成施設IS学園に放り込まれる事になったのだ。そうして現在、アルディギアの飛空艇で日本まで護送中である。総括してかつてないほど忙しい10日間だったと言える。
「・・・外の空気でも吸うか」
そう思って部屋を出て、ふと廊下の窓から下を見下ろした。もう間もなくで目的地の空港に着くと言っていたから本土には近いのだろう。眼下に広がるのは魔族特区絃神島。中心にある要の島、ギガフロートと東西南北に伸びるサブフロートで構成された洋上に浮かぶ人口の島。ギガフロートの中心にある逆三角形の壮大な建造物『キーストーンゲート』の周囲や民家が集まっている地区ではもう真夜中だというのに蛍の群れのように明かりがついている所もあった。しばらくその光景を見つめてから本来の目的を思い出してハッチのある場所まで歩いて行った。そこから甲板に出てスペースのある場所まで手すり伝いに移動し、しばらくそこで過ごそうと考えた。が。彼は思い出すたびにこの時の事をこう言う。「ああ、不幸って重なるんだな」と。エンジンの不調か、はたまた、強い風が吹いただけなのか。ともかく、彼が手すりに体重をかけた瞬間、船体が大きく傾いた。バランスを崩した彼はそのまま緩やかな弧を描く船体のサイドを綺麗に滑り落ちて行く。
「嘘だあああああぁぁぁぁーーーー
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ