第九章
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これで二点目、残り一点だった。
「よっし、今日はちゃうで!」
「これはいけるわ!」
「まだランナー二人おる!」
「しかもワンアウトや!」
「一気に攻めたれ!」
「ロッテをノックアウトや!」
甲子園のボルテージが上がった、こうなるとこの球場は縦にも横にも揺れ動く。そしてその中で矢野がだった。
併殺打、三イニング連続のそれを打ってだった。このイニングの攻勢は終わった。
「ええ時やtったのに」
「これで終わりかいな」
「残念なこっちゃ」
「折角逆転出来たのにな」
「長打で逆転やったのに」
「何でえそこでゲッツーやねん」
ファン達はこれには落胆した、だが試合は続く。
阪神は遂にJFKの登板に入った、これ以上の得点は許さないとの決意のうえで。まずはウィリアムスが投げてだった。
昨日打たれた藤川も二回を力投し最後は久保田だった。マリンガン打線に文字通り一点もやらなかった。
だがそれはロッテも同じで。
藤田、薮田の後は小林雅が投げてだった。矢野がまたしても併殺打を打ってしまいツーアウトランナーなしとなり。
藤本がバッターボックスに入った、猛虎党の祈りは彼に集中した。
「頼む、打ってくれ」
「ここで打ってや」
「ホームランや」
「ホームラン打ったら同点やねん」
「そやから絶対にや」
「打ってや」
まさに祈っての言葉だった。
「ほんまにや」
「打って欲しいわ」
「そして同点にしてや」
「延長戦で逆転や」
「その為にもや」
「藤本、ホームランや」
「ホームラン頼むわ」
心から祈った、だが。
藤本のバットは虚しく空を切ってだった。試合は終わった。
バレンタインの身体が敵地で舞った、ファン達はその胴上げを歯噛みして観た。そして残ったものはというと。
「今回新記録の連続らしいで」
「どんな新記録やねん」
「三試合連続二桁得点でや」
ロッテ側の記録だった。
「打率も防御率も一試合の平均得点もや」
「全部かいな」
「新記録かいな」
「そや、しかも最低打率本塁打ゼロ一試合平均得点最低もや」
阪神側はというと。
「新記録や」
「何でも新記録やねんな」
「ある意味凄いな」
「惨敗中の惨敗やな」
「シリーズ最高の惨敗かいな」
「こんなシリーズなかったらしいで」
日本シリーズでというのだ。
「これまでな」
「そやろな」
「あっという間やったしな」
「打たれて抑えられて」
「何もええとこなかったわ」
「それで記録尽くめやな」
「ロッテはええ方で阪神は悪い方」
まさに正反対であった。
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