瞬間
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
てはくれた。
「ユナのマスコット、よね……?」
「ああ」
「……アイン、だ」
俺の手の中で息も絶え絶えといった様子でいるのは、ARアイドルのユナとともにいる、白い饅頭のようなマスコットだった。ちょうど失念してしまっていた名前を答えながら、ありし日の《血盟騎士団》の格好に身を包んだ青年と、その背後を歩くフード姿の少女が歩いてきていた。
「エイジ……」
「アスナさんたち、SAO生還者から読み取った記憶はそこに保存されている。それを斬れば……全て終わるんだ。全て……」
エイジが顔を伏せながらもそう語りだしたとたんに、俺の手の中でぐったりとしていたマスコット――アインが暴れだして抜け出すと、そのままエイジの前の床に着地した。それはどうにかして逃げようとしているのではなく、せめてエイジの手で殺してほしいと懇願しているようでもあって。
「っ……!」
「エーくん、まだ私もいるよ……一緒に」
それはもちろんエイジ当人にも伝わったらしく、そんなアインに対して怯えたように後退りしてしまうが、その手を悠那に握られると、驚愕によってその場に留まっていた。ユイによって《SAO》のアバターとなった悠那も、もはやARの存在ではなく触ることが出来るのだろう。
「ありがと、ショウキさん。エーくんを止めてくれて。あとはさ、私たちが終わらせるだけ」
「ああ……終わらせよう。二人で」
それでも触れる悠那の手は仮想のものに過ぎないが、二人は手を重ね合わせながら剣を引き抜くと。何の抵抗もせずに斬撃を受け入れたアインに、吸い込まれるように炸裂すると、今度こそ《An incarnate of the Radius》は完全に消滅した。
「あ……」
アインが消え去った後には、幾つもの黄金の光が飛び散っていった。その中でもリズにアスナ、レインの前には金色の飴玉のようなものが現れ、キリトの前には武骨な大剣が抜き身のまま現れていた。金色の飴玉はどこか違う世界にも飛び散っているのを見るに、恐らくはアレが《SAO》の記録なのだろう。キリトにもたらされた大剣は、キリト本人が得心がいったように握っていた。
そうしてアインクラッド第百層《紅玉宮》もまた、その存在を保てないとばかりに消えていき――
「…………」
――気づけば俺たちは、現実のライブ会場へと戻ってきていた。こちらはまだ旧SAOのボスが《オーディナル・スケール》のプレイヤーと戦っており、無意識に椅子から立ち上がって武器の柄を握ってしまうが、それは無用だと気づくのに時間はかからなかった。
「キリトくん……!」
未だに目覚めていないキリトが、《SAO》の時の姿のままでライブステージの中央に立っていた。その手には《An incarnate
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ