401部分:第三十二話 孔明、妹を得るのことその十
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第三十二話 孔明、妹を得るのことその十
彼女達は今は二人を待つだけだった。そしてその二人は。
薬草を摘んでいた。そこでだ。
孔明は上機嫌で傍に立っている鳳統に話していた。
「ねえ鳳統ちゃん、これがね」
「・・・・・・・・・」
黙っている彼女には気付かない。
「ペニシリン草でこれがインシュリン草で」
「・・・・・・・・・」
「物凄い効用があるのよ。だからね」
「知ってる」
「そう、知ってるの」
「全部知ってる」
立ったまま孔明の方を見ない。
「全部」
「そうよね、鳳統ちゃんもお勉強してるもんね」
「だから」
そしてだった。公明にこう言うのだった。
「言わなくていい」
「そうなの。だったらね」
孔明はここで上を見た。太陽が中天にある。それでだった。
弁当箱を出してだ。鳳統にこう申し出た。
「お弁当食べない?」
「お弁当・・・・・・」
「一緒にね。私が作ったんだけれど」
「いい」
「いいって」
「持ってるから」
だからだというのだ。
「私もお弁当持ってるから」
「そうなの・・・・・・」
「構わないで」
そしてだった。鳳統は孔明に対して告げた。
「私に構わないで」
「えっ・・・・・・」
「嫌い・・・・・・」
山ではじめて孔明の方を見て告げた。
「大嫌い!」
「えっ、鳳統ちゃん・・・・・・」
嫌いと告げるとだった。鳳統は孔明の前から駆け去ってだ。帰ろうとする。
「待ってよ、鳳統ちゃん!」
しかし鳳統は待たない。そうして橋に来た。かつて孔明と張飛が通ったその橋をだ。
その橋に来た。孔明はここで追いついた。
「鳳統ちゃん、待って!」
また鳳統に対して言う。
「私が悪かったらなおすから!」
彼女にしてもだ。どうして鳳統に嫌いと言われたかわからなかった。それで狼狽した顔になってだ。彼女に対して言うのだった。
「だから。待って!」
「待たない。待たなくていい」
しかし鳳統も聞き入れない。
「もう私に構わないで」
「そんな・・・・・・」
「いいから」
あくまでこう言う鳳統だった。
「私のことはいいから」
「その橋は」
孔明はここで橋のことを思い出した。
「気をつけて!」
「知ってるから」
鳳統もこのことは知っていたのだった。
「だから私にはもう」
「そんな、だから」
「あっ!」
鳳統の足元の板が落ちた。腐っていたのだ。
片足が落ちた。そして両足も。
何とか両手で板の場所を掴んで助かった。しかしだった。
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