暁 〜小説投稿サイト〜
羅刹女の成仏
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「その方の供養を行いたいので」
「そうですか、では」
「これより」
「はい、させてもらいます」
 こうしてだ、源信は女の供養を執り行った。しっかりと経を読み深い供養を行った。そしてその供養の夜だった。
 源信は夢を見た、その夢に紫の雲が空に浮かんでだ。雲が彼の前に降り立ち。
 その上に女がいた、女は穏やかな笑みで源信に言ってきた。
「有り難うございました」
「まさか」
「はい、貴方様の供養によりです」
 この日こなったそれでというのだ。
「私は生まれ変わることが出来ました」
「では」
「はい、鬼からです」
 仏の教えから最も離れたこの存在からというのだ。
「極楽浄土の者に生まれ変わることが出来ました」
「そうなのですか」
「全て貴方様のお陰です」
 こう源信に言うのだった。
「まことに有り難うございます」
「いえ、それは貴女がです」 
 源信は自分に礼を述べる女に言った。
「鬼の眷属でありながら過ちに気付き」
「そしてですか」
「行いをあらためられたからです」
「だからですか」
「喰らわれようともそのことを守られました」
 その食われていく恐ろしい有様も思い出しつつ述べた。
「だからです」
「私は極楽浄土に生まれ変わることが出来たのですか」
「左様です」
「では供養からではなく」
「貴女のお心からです」
 救われたというのだ。
「そうなったのです」
「そうなのですか」
「はい、あくまで貴女のお心掛けからです」
 女は救われたというのだ。
「そうなったのです」
「そう言われますか」
「はい、では」
「これより極楽浄土で御仏の教えを聞き」
 女は源信にこれからのことも話した。
「そのうえで」
「涅槃にですね」
「至る様にします」
「そうされて下さい」
「それでは」
 女はにこやかな笑みで応えてだ、そしてだった。
 西方に三度礼拝して空にと戻っていった、源信は朝に目を覚まして一人笑みを浮かべた。
 その後彼は比叡山の僧兵達にこの話をした、すると彼等は感銘を受けると共にだった。
 その鬼達についてだ、源信に言った。
「鬼共は放っておけませんな」
「放っておいてはまた人が喰らわれます」
「その門の場所をお教え下さい」
「我等が行って成敗してきます」
 こう口々に言い源信の先導を受けて鬼の山門まで行き攻め込み一気に全ての鬼達を成敗した。鬼のことも終わらせた。
 この話は昔から伝わっている話であり古書にもある、鬼といえど信心を持ち過ちに気付き行いを正せば救われるということか。そう考えると人は常に己を振り返りその過ちがないかを見ていくべきであろうか。それは極めて難しいことであるにしても。しかし悪徳しかないと言われている鬼が出来たことが人に出来ないのか。そう考える
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ