第三章
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「それで近頃は一族のところに人を騙して連れ込まぬ様になりましたが」
「一族がですな」
「私に怒り若し今日誰も連れて来ないのならば」
その時はというのだ。
「私を喰らうと言っているのです」
「一族であろうと喰らう」
源信は女のその言葉を聞いて一旦目を閉じてから言った。
「それこそまさに」
「鬼の所業だと」
「その通りです」
こう言うのだった。
「鬼だからこそです」
「そうするのですね」
「左様ですね」
「そうですね、それでなのですが」
女はここまで聞いてだ、源信にあらためて話した。
「私はこれから鬼の館に戻ります」
「そうすれば」
「はい、私は喰われてしまいますね」
「相手は鬼です」
源信は強張った顔になり女に答えた。
「ですから」
「必ずですね」
「そうなります、逃げられては」
「いえ、実はお願いがありまして」
「拙僧にですか」
「それでこの度お伺いしたのです」
源信にというのだ。
「貴女が非常に徳の高い方なので」
「だからですか」
「はい、私が命を落とした時に」
一族である鬼達に喰われてというのだ。
「その時にお坊様の法力で成仏させて欲しいのです」
「そう思われてですか」
「参りました」
源信のところにというのだ。
「旅の帰りでしたが」
「そうでしたか」
「はい。お願い出来ますか」
「逃げられるべきだと思いますが」
「いえ、逃げれば」
そうしてもとだ、女は再び首を横に振って答えた。
「それでは成仏出来ません」
「最初からそのおつもりで」
「参りましたので」
だからだというのだ。
「是非です」
「そうですか、それでは」
「お願いしたいのですが」
「そこまで思われるなら」
源信は女の気持ちを汲んで答えた。
「拙僧でよければ」
「お願いします、では今より」
「館に戻られますか」
「一族に気付かれない位離れてです」
そしてというのだ。
「ついて来て下さい」
「それでは」
源信も頷いてだ、そしてだった。
女についていくことにした、女は山道を進んでいく。それは源信が今まで知らない道でありその道をだ。
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