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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十三話 第一特設艦隊
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合は十四時です。十四時までまだ十二分も時間が有りますよ」
チュン参謀長の言葉に皆が頷いた。おっとりした口調だ、パン屋の二代目と言われた人物に相応しい口調だろう。
本当なら笑いが起きてもおかしくないところだが誰も笑わない、黙って頷いている。そして会議室には十五分も前に全員が集まった。ここに居ないのはヴァレンシュタイン司令官とミハマ中佐だけだ。
皆、新司令官を畏れている。用兵家、謀略家としての実力もさることながら皆が畏れているのはその厳しさ、冷徹さに対してだ。無能に対しては容赦が無い、俊秀を謳われたフォーク中佐は病気療養中、ロボス元帥は総司令官職を解任された。ムーア中将、パストーレ中将の更迭にも関与していると言われているがその事を疑う人間は誰も居ない。
そして勝ち戦でも喜び浮かれるという事が無い、周囲が鼻白むほどに冷静だと聞いた事が有る。実際ミハマ中佐もヴァレンシュタイン中将が驚くところを見た事が無いと言っている。
おそらく事実だろう。何度か決裁を貰いに行った事が有るが驚くほど冷静だ。まだ二十歳を超えたばかりの若者が艦隊司令官になったのだ、普通なら何処かで喜びや覇気、気負いを出してもよいのだがそれが無い。十年以上も艦隊司令官を務めているような落ち着きを周囲に見せている……。
十四時五分前、会議室のドアが開きヴァレンシュタイン司令官が入ってきた。後ろにはミハマ中佐が付いている。全員が起立して司令官を迎えた。何処かで大きな音がする、視線を向けるとマスカーニ少将が顔面を紅潮させて立ち上がるところだった。どうやら上手く立てなかったらしい。皆も気付いたはずだが、表情を崩す人間は居なかった。
ヴァレンシュタイン司令官が正面に立つと皆が一斉に敬礼した。司令官が答礼する。司令官が椅子に座るのを見届けてから皆が席に着いた。
「定刻前ですが全員揃っているようです。会議を始めましょう。コクラン大佐、補給の状況は?」
「はっ、明日には作業を完了する予定です」
私の言葉に司令官が頷いた。
「第一特設艦隊はこれより訓練に入ります。出立は七月二十日、09:00時、目的地はランテマリオ星系となります。ハイネセンへの帰還は三か月半後、十一月初旬になるでしょう」
ハイネセンからランテマリオまでは約一ヶ月かかる。つまり訓練自体は一ヶ月半を想定しているという事か。
「第一艦隊、第三艦隊も我々と前後してハイネセンを出立します。但し、彼らが味方なのはバーラト星系を出るまでです。それ以後は敵となります」
会議室がざわめいた。皆が顔を見合わせている。
「バーラト星系を出た時点から訓練が始まるという事ですか」
チュン参謀長が驚いたような口調で問いかけるとヴァレンシュタイン司令官が頷いた。チュン参謀長は天井に視線を向け何かを考えている。そして司令
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