第一章
[2]次話
シャット=アウト
彼の言うことはとにかくしつこい、粘着質というか本当にしつこい。
一度怒るとその相手にとことんこだわり仕返しを企み言い続ける、その執念深さは蛇よりもという位だ。
今もそうだ、仕事で揉めた同僚のことを私にしつこく言っていた。
「本当に頭にきたから」
「だからっていうのね」
「まだまだやってやるよ」
こう私に言う。
「何度でもね」
「気が済むまでっていうのね」
「そうだよ、あれだけやられたんだ」
やられたことも聞いたけれど些細なことだった、その些細なことでしつこくこだわるところが彼の困ったところだ。
「まだやってやる」
「やれやれね」
「やれやれって?」
「だからよ、しつこくしなくてね」
それでというのだ。
「もっとね」
「もっと?」
「忘れたら?」
こう彼に言った、食堂で一緒にお昼を食べているけれどあんまりしつこく言うので好物の天丼もまずく感じてだ。
「そうしたら?」
「忘れるって」
「そうよ、その人のことは私も知ってるけれど」
同じ会社にいるからだ、私と彼は仕事の同僚であると共に交際相手同士でもあるのだ。
「そんなに悪い人じゃないわよ」
「いや、陰湿なんだよ」
「一度揉めたら?」
「だから僕もこれだけ怒ってるんだよ」
「その場で言い返したのよね」
「そうだよ」
「それでその後も何度も」
それこそしつこく攻撃している、陰からコソコソではなく正面から相手にはっきりわかる様にやっているのがせめてもの救いだけれど。
「やってるのよね」
「そうだよ」
「それで相手もやり返してきてるわね」
「そのこともその通りだよ」
「それはね」
「それは?」
「もう聞いていてもうんざりするから」
それが好愛相手の話でもだ、実際にうんざりとした口調で海老フライ定食を食べている彼に対して言った。
「聞きたくないし」
「君も?」
「そうよ、誰が嫌いとか思い出すだけで腹が立つとか」
そうした恨み節はだ。
「聞いて面白くないから」
「だからだっていうんだ」
「そんな話はネットにでも書いてね」
言うまでもなく匿名でだ。
「好きなだけ書いていたらいいわ」
「そうしてストレス解消しろっていうんだ」
「折角そうした掲示板群があるから」
あのあまりにも有名な掲示板群だ、相当な荒らし行為だの殺害予告だのをしない限り問題にならない場所だ。
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