一 暁の静けさ
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…―――約束、したよな。
一緒に、ラーメン食いに行こうって。
四苦八苦していた【口寄せの術】に助言をしてくれたり、誰かに頼ってもいいんだと思わせてくれたり、見舞いに花をくれたり。
そうして、いつか一緒に一楽のラーメンを食べに行こうって約束した相手。
中忍試験に共に参加した間柄だけだったのが、いつの間にか、大きな存在になっていた。
だから、信じられない。
同期の仲間が自分を呼んでいる。切羽詰まったように叫んでいる。自分以外の全員が警戒態勢を取っている。
それが何故なのか、彼女はわからなかった。
不意に、大きな雲がその場の面々に影を落とす。
雲は、大樹の枝上に佇む彼にも例外なく、頭上を覆い被さってゆく。周囲から敵意を向けられている張本人は、涼しげな顔で彼女を見つめ返した。
雲の影と、そして頭上の葉陰で暗くなっても、その眼差しだけは妙に美しく輝いていた。
「…―――ナルッ!!」
シカマルの声で、波風ナルはハッと我に返る。肩と共に、ツインテールの長く綺麗な金髪が大きく跳ねた。
何度も自分を呼んでいたらしいシカマルが、同期が、木ノ葉の仲間達がナルに呼びかけている。その声が彼女には何処か遠くから聞こえた。
けれど、先ほどからずっとナルの足は固まっていた。直立不動のまま、ある一点だけを見つめていた。
「そいつから離れろ!そいつは、うずまきナルトは―――」
周囲からの視線を一身に集めている彼の服が、ふわり、風で舞い上がる。純白の外套とは対照的な黒い裏地。
その端に、見覚えのある忌まわしき紋様が垣間見えた。
赤い雲。
「…―――『暁』だ…ッ!!」
自分の中の九尾をつけ狙う犯罪組織。その象徴が瞳に飛び込んでくる。
空のように純粋な青を、信じられないとばかりに大きく見開いて、ナルは呆然と彼を仰いだ。雲間から覗く太陽の光が、波風ナルとよく似た髪の色を煌めかせる。
忍び達に完全に包囲されながらも、ナルの視線を受け止めた彼は、滄海の如く深い青の瞳をゆぅるりと細めた。
敵意と困惑と殺意が渦巻くその中心で、彼は―――うずまきナルトは悠然と微笑んでみせる。
波風ナルを見つめるその瞳の青は、その場の誰にも真意を悟らせない、徹底的な謎を秘めていた。
光の無い、全くの闇だった。
あの時、あの瞬間、あの場所で。
二人の立ち位置が違っていたら。
両者の些細な言動が一つでも変わっていたら。
君と僕の立場は逆だったのかもしれない。
僕の見る光景が君の瞳に映っていたかもしれない。
そうしたら。
僕の居場所に君がいて、君の世界に僕が生きていた。
こちら側に君が生き
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