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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十二話 蛟竜
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老ウェイターが注文を取りに来た。僕とヤン准将は肉をメインに、ヴァレンシュタイン准将とミハマ少佐は魚をメインのコースを頼んだ。飲み物は二杯の七百六十年産の赤ワインと二杯のジンジャーエール。
「ユリアン君が年間得点王を取れる事を祈って、その時にはまたこうして集まってお祝いしましょう」
「はい、有難うございます」
ヴァレンシュタイン准将がジンジャーエールのグラスを掲げて言葉をかけてくれた。皆が軽くグラスを掲げて僕に言葉をかけてくれた。“頑張ってね”、“頑張れよ”、……絶対に年間得点王になる、もう一度誓った。
「ところで今日は何か御祝い事でも有ったのですか?」
そうヤン准将がヴァレンシュタイン准将に問いかけたのは何皿目かの料理が運ばれた時だった。デートだと思うんだけど准将はそうは思わなかったのかな、でもさっき躊躇っていたけどあれは何でだろう? 邪魔しちゃ悪いと思ったんじゃないの。
僕の疑問を他所にヴァレンシュタイン准将とミハマ少佐は顔を見合わせ微かに苦笑を漏らした。ほらね、准将も鈍い。
「御目出度い事が有ったのです、それで御祝いを」
「喜んでいるのは少佐だけです、私にはとてもそうは思えない」
「そんな事は有りません。御目出度い事です」
ヴァレンシュタイン准将とミハマ少佐が話している。准将は半ばぼやくように、少佐は宥めるような口調だ。デートじゃないみたいだ、ヤン准将が正しいの?
「御目出度い事ですか、何かな」
ヤン准将が重ねて問いかけるとヴァレンシュタイン准将が困ったような表情を見せた。
「まだ内定ですが今度中将に昇進する事になりました。私だけじゃありませんよ、ヤン准将とワイドボーン准将もそうです」
眼が点になった。二回、ヤン准将とヴァレンシュタイン准将を交互に見てしまった。ヤン准将も唖然としている。
「私達三人は昇進とともに司令部参謀から艦隊司令官に転出することになります。ミハマ少佐、いやもうすぐミハマ中佐ですが彼女は目出度い事だと言っているんです」
またびっくりだ、ヤン准将が中将になって艦隊司令官? 凄いや!
「よろしいんですか、そんな事を言って。まだ極秘では?」
ヤン准将が周囲を憚るように声を潜めた。僕も慌てて周囲を見た。大丈夫、誰も気付いていないみたいだ。
「明日にも内示が出るそうです。そうなれば同盟中に広まるでしょうね」
何処か他人事みたいな口調だった。ヴァレンシュタイン准将は不満なのかな、昇進だし、出世だと思うのだけれど。
前回の戦いでヤン准将、ヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将が作戦立案、実行において大活躍したことは知っている。二階級昇進するんじゃないか、そんな事を言う人もいるけどまさか本当にそうなるなんて……。
「しかし、貴官は司令部に居た方が良いのでは。
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