暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十二話 蛟竜
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が」
「申し訳ありません」

准将が頭を掻いている。困ったときの准将の癖だ。僕の方を見ると僅かに肩を竦めた。
「仕方ないね、他を当たろうか」

「ヤン准将」
帰りかけた僕達を止めたのは女の人の声だった。振り返ると赤いドレスを着た若い女性が微笑んでいた。准将の知り合いかな? でも准将も驚いた表情で女性を見ている……。

「ミハマ少佐……」
「よろしければ御一緒に……、ヴァレンシュタイン准将もそう言っています」
「ヴァレンシュタイン准将が……」

ヤン准将が困ったような表情で店内に視線を向け、誰かを探すようにして一点で止まった。薄暗い照明の下で全てのテーブルにはキャンドルが灯されている。僕もヤン准将と同じ方向に視線を向けると奥のテーブルから若い男性がこちらを見ていた。ヴァレンシュタイン准将だ、何度かTVで見たことが有る。

「いや、しかし、御邪魔だろう」
「そんな事は有りません。さあ、遠慮なさらずに」
ヤン准将が困ったような表情で僕を見た。ミハマ少佐はドレスアップしている。とっても綺麗だ。もしかするとヴァレンシュタイン准将とデートなのかもしれない。ヤン准将もそう思っているんだと思う。

困ったな、邪魔しちゃ悪いだろうけどヴァレンシュタイン准将にも会いたい。それにヤン准将、ヴァレンシュタイン准将と一緒に食事なんて夢みたいだ。もじもじしているとヴァレンシュタイン准将が席を立ってこちらに歩いて来た。小柄で華奢な姿は軍人には見えない。准将は黒のフォーマルを着ている。やっぱりデートだったのかな、邪魔しちゃった?

「ヤン准将、遠慮なさらずに」
「しかし、迷惑では……」
「そんな事は有りません、さあ」
ヴァレンシュタイン准将は優しく微笑みながら僕達を誘ってくれた。ヤン准将は困ったようだったけど最後には頷いて“では御好意に甘えようか”と言ってテーブルに向かった。

テーブルには手編みのクロスが掛かっていてキャンドルが置いてあった。薄暗い照明の下でキャンドルの火が灯っていると何とも言えず幻想的な感じがする。同盟でも最も高名な軍人二人と一緒に居るんだという事が余計にそんな気持ちにさせた。席に着くと直ぐにヴァレンシュタイン准将が話しかけてきた。

「君がユリアン君だね、フライング・ボールのジュニア級で活躍していると聞いている。年間得点王は取れそうかな?」
「このままいけば取れるんじゃないかと思います」
驚いた、ヴァレンシュタイン准将は僕の事を知っている。絶対に年間得点王にならなきゃ。

「そうなのか、ユリアン」
「御存じなかったのですか、ヤン准将。ユリアン君はこの都市ではちょっとした有名人ですよ」
ミハマ少佐がちょっとヤン准将を冷やかすとヴァレンシュタイン准将がクスクスと笑いだし、ヤン准将が面目なさげに頭を掻いた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ