第7章 聖戦
第171話 介入者
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有無を言わせぬ先制攻撃は流石に問題がある。
そう考え、普段通りのガリア王太子ルイのペルソナで話し掛ける俺。
しかし……。
本人はどうやらニヒルに笑った心算らしいのだが、どうにもいじけたアヒルが不満げにくちばしを歪めたようにしか見えない笑みをコチラに見せた後、
「匿名希望のチンチクリンとでも名乗って置きましょうか」
もう何処からどう突っ込んで良いのか分からない答えを返して来る男。
ただ、その中でも一番気になるのは……。
【有希】
もっとも、流石に現実の言葉にして問い掛ける訳にも行かないので、【念話】にて自らの左隣に立つ彼女に問い掛ける俺。
【この目の前に現われた道化者は、どうも日本語で会話している様に俺には感じられるのだが、オマエさんにはどう聞こえている?】
此方は普段通りの気易い言葉使いで。
そう、此方の世界に戻って来てから分かったのだが、彼女は自らが名乗った『湖の乙女』と言う名前よりは、何故か有希と呼び掛けられた時に良い感情を発する事の方が多い。ただ、前世に関係する名前で常態的に呼び続けるのは真名の関係がある以上、流石に問題があるので、出来るだけ人前で使用する事はないようにしている。
普段通り、まったく感情の色を見せない……まるで良く出来た人形のような、平坦で、ただ其処にあるだけの、仮面の如き静謐な表情で。しかし、心の方はかなりの高揚感を発しながら小さく首肯く有希。
成るほど。
俺にはこのハルケギニアに召喚された際、ハルケギニアの言語を日本語に同時通訳をする能力が与えられている。この能力の御蔭で最初にハルケギニアの言語を覚える必要がなかったのだが、相手が日本語を話していても、ハルケギニアの言語で話しているのと同じように聞こえていたのも事実。
例えば、有希や妖精女王こと弓月桜などは、俺と二人きりの時は間違いなく日本語を使って会話を交わしていたと思われるのだが、しかし、俺の方は多少訝しく思いながらも、その辺りの事実に思い至る事はなかった。
そう、これも思い込み。異世界なのだから言葉が通じないのは当たり前。異世界で暮らす彼ら、彼女らが使って居る言語は日本語以外の何か別の言語であるに違いない。だから、今、俺が言葉を理解出来て居るのは特殊な魔法の作用なのだ……と思い込んでいたから起きて仕舞った齟齬。
何事に付いても思い込みと言うヤツは問題がある。そう言う事なのだと思う。
「成るほど、貴卿は元日本人と言う事ですか」
此奴がここ……ハルケギニアに居る原因は分からない。次元孔に落ち込んだのか、俺のように何モノかに召喚されて終ったのか。
それとも――
俺の問いに対して、何故か妙に自慢げに厚ぼったい唇を歪める自称、匿名希望のチンチクリン。
……と
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