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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第171話 介入者
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 並みの人間ならば十センチ先さえ見通す事の出来ないレベルの闇。その真なる闇に包まれたここ……アルザスのシュラスブルグ城。
 そう、当然のように人は闇を恐れる。それはもしかすると()()()()、と言う状態。つまり虚無と言う状態を恐れているのかも知れない。
 何故ならば、真なる虚無と言う物は()()()()()()()、と言う状態。世界のすべてを失って仕舞った状態の事を指す言葉だと思うから。

 世界を失うと言う事はそのまま自分自身をも失うと言う事。つまり、其処から自らの死を連想させるから。
 生者がもっとも忌避したい『死』と言う状態を想像させるから……かも知れない、と思うから。

 異様な気配に包まれたここ石造りの回廊。妙に重苦しく、一瞬でも気を抜くと足元から何モノかに地下深くに引き吊り込まれそうな……通常ならばあり得ない妄想が沸き起こって来る場所。
 本来、この通路の向かう先は……この死に塗れたシュラスブルグ城内で唯一、生者の気配が発生している場所。王の間であり、その先には王や王妃の寝室があるはずなのだが、何故かここが黄泉の国へと続く道。黄泉平坂であるかのように感じる。



「戦闘力五か。……ゴミめ」

 明るい光を纏いながら掛けられる、妙に間延びした男性の声。
 当然、これは知っている声ではない。但し、突然、暗闇の向こう側から声を掛けられたとしても驚く必要もない。そもそも、この男が近付いて来て居た事にはとっくの昔に気付いていたし、有無を言わさずに先制攻撃を掛けて来るような相手ならば、人を呪わば穴二つの法則に従い、物理的な攻撃であろうが、魔法に類する攻撃であろうが、最初の一撃だけは確実に反射出来る術を全員に対して施してある。

 シュラスブルグのアルザス侯の邸宅に侵入して……と言うか、シュラスブルグの街に潜入してから此処に至るまでに終ぞ出会う事のなかった、現在進行形で生きている人間にようやく出会えた事に対して少しだけ安堵する俺。
 確かに死亡した後にも戦い続ける兵士と言うのは有史以来、為政者の大いなる夢のひとつであったのは間違いない。間違いないと思うのだが、しかし、城に侵入してから一度も生者に出会う事がないと言う状況は流石に……。

「其処に直れ犯罪者ども」

 お前たちがこの世界を混乱に導いている元凶だと言う事は既に調べが付いて居る。大人しくお縄につけば御上にも慈悲の心と言う物がある。

 ここに至るまでに倒した不死者の数は十体程度。それ以外にも有無を言わさず襲いかかって来た悪霊の類も数知れず。はっきり言うと、とてもこのような中で霊的な意味で無防備な一般人が生きて行けるとは思えないような状況。陰の気が強すぎる状況だけに、よくぞ生きて居てくれ
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