388部分:第三十一話 張三姉妹、書に気付くのことその八
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第三十一話 張三姉妹、書に気付くのことその八
「謝れ!」
「御前が謝れ!」
「何で俺が謝らないといけないんだ!」
「御前が押したんだろうが!」
「いや、御前だろうが!」
こう騒いでだった。どうにもならない状況だった。
それを見てだ。張角がおろおろしながら話しだした。
「ど、どうしよう」
「親衛隊の人達呼ぼう」
張宝はその長姉に落ち着いて言う。
「そうしよう」
「けれどその前に騒ぎが大きくなりそうだよ」
「それはないわ」
やはり冷静な彼女である。
「だから」
「けれど」
「まああれよね」
ここでそれまで黙っていた張梁が言った。
「騒ぎはすぐに収めるに限るわ」
「地和ちゃんもそう思うよね」
「勿論。だからね」
張梁は自分が持っていた声を大きく出させる宝貝でだ。こう言うのだった。
「喧嘩なんて止めようよ」
「おっ?」
「地和ちゃん?」
「私達の歌聴いて。いいかな」
「そ、そうだよな」
「やっぱりな」
彼女の言葉でだ。騒いでいた面々も静かになった。
「俺達その為に来ているんだしな」
「三姉妹の歌を聴く為にな」
「それだったらな」
「ああ、喧嘩なんて止めるか」
「そうだな」
こう話してであった。彼等は穏やかになった。場は静かになった。
しかしだ。それを見た張角と張宝はきょとんとした顔になった。そうしてそのうえで、であった。張梁を見るのだった。
「あの、地和ちゃん」
「これってまさか」
「うふふ、そうよ」
張梁は姉妹に右目をウィンクさせて応えた。
「ちょっとね。宝貝を使ってね」
「成程、この場合はね」
「使いようね」
「これ位はいいでしょ」
張梁は嵐を止めたまま言う。
「歌以外にもね」
「そうね。これ位だったらね」
「いいわよね」
二人も納得した。こうしてコンサートは再び行われだ。今回も成功のうちに終わった。
その次の日であった。上等なホテルの一等室で寝ている三姉妹のところにだ。扉のドアをノックしてそのうえで声がかけられたのだった。
「あの」
「はい?」
「えっ、随分早いわね」
三姉妹は目をこすりながらその声に応えた。
「一体何かな」
「ファンのお手紙かな」
「それか贈り物かしら」
張宝はこう考えた。その通りだった。
「はい、これです」
「あっ、お饅頭」
「それも中にあんこが入ってるやつね」
「そうね」
三姉妹はホテルの従業員が持って来たその饅頭を見て喜びの声をあげた。
「私これ大好きなのよ」
「私もよ」
「私も」
これは三姉妹共通だった。そうしてだった。
その饅頭を笑顔で受け取る。だが。
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