巻ノ九十四 前田慶次その四
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「そこは違いますな」
「しかし使い方はな」
「同じということで」
「前田殿のところに行きな」
「前田殿からですな」
「槍、いや棒の使い方を授かるぞ」
それをというのだ。
「米沢まで行ってな」
「わかり申した」
「ではすぐにな」
「この九度山から」
「米沢に向かうぞ」
「それでは」
こう話してだ、そのうえでだった。
二人はすぐに九度山を経って米沢に向かった、やはり彼等だけが知っている忍道を使うと進むのは速かった。
そしてだ、米沢に着くとだった。
すぐにだ、幸村は共にいる伊佐に言った。
「着いたがな」
「はい、しかしですな」
「上杉家はかつては西軍におられたが」
「今はですな」
「幕府の中に入っておる」
「大名として」
「だから親しくは出来ぬ」
幸村が人質として春日山にいた時の様にというのだ。
「今はな」
「左様ですな」
「しかも米沢じゃからな」
「越後におられた時の上杉殿とは違いますな」
「大きく変わった」
そうなったというのだ。
「どの家もそうであるが」
「ですな、では」
「そのことも頭に入れてな」
「これから前田殿のところ参上し」
「教えを乞おうぞ」
慶次のその術をというのだ。
「これよりな」
「わかり申した」
「おそらく上杉殿も直江殿も我等はここに来たことはご存知じゃが」
「それもですな」
「あえてじゃ」
「挨拶をせずに」
「我等はここにはおらぬ」
米沢、この地にというのだ。
「そうなっておるからな」
「だからですな」
「そうじゃ、挨拶はせずにな」
「只の旅の武芸者として」
「前田殿のところに参ってな」
「教えを乞いますか」
「そうしようぞ、前田殿ならば」
慶次のことは知っている、それ故の言葉だ。
「教えを乞えばな」
「我等でも」
「無論前田殿も気付かれる」
幸村達のことにというのだ。
「化けておってもな」
「それでもですな」
「そうされる、しかしな」
慶次ならばというのだ。
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