巻ノ九十四 前田慶次その一
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巻ノ九十四 前田慶次
家康は駿府に入って天下の政を見ていた、彼は法を定めるだけでなく天下を治める仕組みも固めていっていた。
そのうえでだ、彼は大坂のことを聞きこう言った。
「大坂だけ欲しいがのう」
「はい、大御所様は」
「左様ですな」
「あそこを手に入れればそれでじゃ」
まさにというのだ。
「天下は成る」
「東の江戸に西の大坂」
「この二つを得て、ですな」
「そのうえで幕府の政は定まる」
「そうなりますな」
「大坂から西国を治め天下のものを動かす」
家康は確かな目で語った。
「だからこそわしは大坂が欲しいのじゃ」
「天下を治める為に」
「その為にも」
「あの城と三国じゃ」
摂津、河内、和泉のというのだ。
「これだけで充分じゃ」
「ですな、豊臣家はです」
「正直どうとでもなります」
「あの家は他のところにやれば充分です」
「それだけでよいです」
「江戸の近くに置くか大和にでも行ってもらうか」
豊臣家はとだ、家康は述べた。
「何なら茶々殿がわしの奥になってくれてもよい」
「ですがそれは」
「既に」
「また申し出てもよいが」
家康は笑っていった、笑っているが決して品のないものではない。
「わしからな」
「いえ、大御所様が申し出られても」
「それでもです」
「茶々様がよしと言われませぬ」
「あの方が」
「そこじゃ、わしは悪い様にせぬ」
そのつもりである、実際に。
「仮にも正室として迎えるのだからな」
「だからこそですな」
「そこはしっかりとですな」
「礼節を守り」
「そのうえで、ですな」
「守っていくつもりじゃがの」
正室として迎えてもというのだ。
「勿論お拾殿もな」
「はい、そうなればあの方は大御所様の養子となりますし」
「そうする理由がないですな」
「全く以て」
「既に千を嫁がせた」
孫娘である彼女をというのだ。
「そのうえでそれじゃ、ならばな」
「悪い様にはされぬ」
「その様にですな」
「そのつもりはない、しかし大坂はもらう」
この地はというのだ。
「それだけじゃ、大坂を手に入れれば」
「幕府もですな」
「磐石になります」
「天下を長きに渡って治められます」
「そうなりますな」
「だから大坂だけ欲しいのじゃ」
天下を統一する為にというのだ。
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