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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十二話 それぞれのかたち
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はなにも言い返せなかった。
俺が両親を亡くした後、両親と同じ職場で働いていたリンディさんの養子になった。
だけどそれは書類上の関係なだけで、家族らしいことをしてきたかと言えば、無いだろう。
誕生日に『誕生日、おめでとう』と言われたことがあっても、家族だけでケーキを囲んで祝ってもらったことは無い。
親として接するより、上司と部下の立場で接する時間の方が多かった。
怒られるのは仕事のミス。
褒められるのは仕事の成功。
クロノも混じって三人で食事に行ったことがあっても、リンディさんとクロノが会話をして俺は食べながら傍観していた。
思い出せば思い出すほど、『小伊坂 黒鐘』と『ハラオウン』の距離が遠いということを思い知らされる。
だからこうして二人きりの時間を、居心地悪く感じるんだ。
そして話せば話すほどイライラして――――、
「私はあなたのこと、自分の息子だと思ってますよ」
「ならその敬語やめないか?」
こうして失礼な発言が出てしまう。
「……そうですね。 いえ、そうね」
この人にとって敬語は、私語と同じレベルで使ってしまうものかもしれない。
それだけ管理局で長く働いているってことだろう。
だけど、
「家族なら、もっと砕けた口調でいいはずだ」
俺が言えた義理じゃない。
俺だってこの人を、『リンディさん』と敬語の呼び方をしている。
こうしてイラ立ちに背中を押されないと、自分の口調を砕かせることができないことだって問題だ。
「ごめんなさい。 言い訳になるけど、一緒にいる時間はほとんど職場だったから、その場所の口調になってしまって」
「……うん」
閉ざした口で、喉だけで音を出すように頷く。
イラ立ちが少しずつ落ち着いて、冷静になればなるほど、今度は罪悪感で言葉が出てこない。
ああ、ままならないな。
リンディさんも言葉が見つからないのか、押し黙って俯いてしまってる。
……こういう時、家族ってどう言う会話をするんだろう?
世間話でもするか?
仕事の話でもするか?
ああ、そういえば高町たちがジュエルシードの回収で現場に行ってるんだったな。
それをネタにすればいいか?
「………………っ」
口を開けようとした。
声を出そうとした。
なのに、どれもできない。
俺は俯いたまま、身動き一つ取れなかった。
そうして気づく。
俺はとっくに、家族のかたちを忘れていたんだ。
家族がどんなものかわからない。
いや、分からなくなるほど、家族が遠くなっていたんだ。
この五年と言う時間は
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