第49話 水面下の崩壊
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〜☆〜
「誤魔化すな。なんであの場所にいるんだと未遥!」
「……」
前から……それこそ、出会った当初から変なヤツだなと思っていた。いきなり話しかけてきては一人で勝手に笑い転げるし、別に笑いどころじゃないところでツボにはまるわ、清楚で大人しそうという見た目に反してアクティブな性格しているし。だけど、人の悩みは真剣に聞き、その悩みの解決までお手伝いするというお節介を極めているのだろうか、というくらい世話焼きな奴だった。
とにかく、ただひたすらに変な奴だなと思っていた。
だけど、これは違う。
俺が追っかけていた目の前の少女は違う未遥であることに間違いは無いのだが、違う。
自慢の髪もボサボサで、俺どころか何処も見ていない虚ろな目をしている。
最後に会ったのはいつだっただろうか、と模索する中、未遥はたどたどしい足取りで近づいて口を開けては閉じてを繰り返している。
たった数週間でこの風変わりはただ事じゃないと判断し、ふらつく彼女を支える。
服越しからでもわかる彼女の冷たさに一瞬手を引きたくなるも、俺は意地を張って力強くそのまま抱きしめる。
「どうしたんだよ一体!未遥、なにがあったんだ!」
「……か────には────ない」
「え?」
震える唇から僅かに漏れる声に意識を集中するも、何を言っているのかわからない。
だけど、予想外の姿に居てもたってもいられず、彼女の口もとを注視すると……ようやくわかった。
────こ う さ か に は わ た さ な い
……高坂には渡さない。
未遥はそう言っていた。間違いない。何を渡さないかなんて、もはや言われなくてもわかっている。憎悪に満ちた表情は俺じゃなくて、今ここにいない穂乃果に向けられている。
「……穂乃果には手を出すなよ」
「っ!?どう、して────」
「アイツには……助けてもらってばかりだからだよ。まだ何にも恩返しができていない」
「……あんな子に、恩返しなんて必要ないよ。大地君も隣にいる必要は無いんだよ?私が、あの時みたいに支えるから。ね?」
人が変わってしまったかのような虚ろな瞳、揺れ動く感情、殺意、嫉妬......浮き沈みするその感情は、俺の知っている未遥じゃない。
それは、出張に行く父親を無理やり引き留めようとする娘のような光景。
人はここまで変わってしまうのだろうか。
そうしてしまったのは俺の責任。だけど、それを背負うわけにはいかない。
「なぁどうしてしまったんだよ!何が君をこうしてしまったんだよ!」
「私は変わってない!大地君が前みたいに私だけ
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