第49話 水面下の崩壊
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見えるようでもあり、小さく見えるような気がした。
わからない。どうして笹倉大地という少年はあんなにも味気の無い生き方をしていうのか。私には理解できない、理解に苦しむ。
……それでも、私の中に何かが残ってしまった。それが何なのかは今でも見つけられていない。
彼の姿が消えてしまった後でも、彼のいた場所を眺め続けて思う。
『仲良くなりたい』と。出会いがどうであれ、私になかにはただそれだけが残っていた。
────これが、私と大地君の本当の出会い。大地君自身はこのことを覚えていなくて、食堂での一件が出会いだと思い込んでいるみたいだけど、私にとってこっちの方が遥かに大きな衝撃を受けていた。
何かを失い、冷めていても根っこの部分が生きている感覚。
根っこを守る周りの土がだめでも、意地を張って成長しようとする根性。前を見たくても見る機会と勇気が無くて彷徨っているような気配。
たった数分のやり取りで、大地君からそこまで感じ取ってしまった事に驚きつつも、『これは運命なんだ』と思ってしまった当時の私。だから私は興味を抱かずにはいられなかった。大地君は今の自分に至るまでに何を見て、感じて、考えて、行動を起こしてきたのか。
彼の行動原理を知りたいと願ってしまった。
それが恋という感情にあてはまらなくても、私にとっての初恋が彼に対する興味だった。それは今でも変わらずに胸の奥深くで根付いている。
その恋愛感情の中には当然独占、支配、色欲といった欲があるのも自覚している。
大地君の幸福を自分の幸福よりも願い、大地君が苦しむくらいなら私が苦しみ、彼が望むことを自分の望みを犠牲にしてでも叶えたい自己犠牲感が、私の中をうずめいている。
狂っていることくらい当の昔から自覚している。彼が私以外の異性と楽しそうに話している姿を見るのは我慢ならないし、もしかして付き合っている人がいるんじゃないかと不安にもなる。
本当は私でもこうなるつもりはなかった。ここまで人に興味をもって、依存するなんて……。
「我ながら、遠回りな事してるよね……」
珍しく感傷に浸るような独り言をこぼす。
特段ネガティブ思考を持ち合わせているわけでは無いけれど、あまりにも自分の思うがままに事が動いてくれなくて苛立ちを込めた愚痴だと思う。
このままあの子の思うがままにさせていたら、間違いなく取り返しのつかない結末を迎えそうで、かと言って、その結末に導かないようにするためにはどうしたらいいのか……ここ数日思考が止まりっぱなしなのも事実だ。
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