第49話 水面下の崩壊
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う1人の日直がサボっていなくなったから私がやってるの。どう?私優しいでしょ』
『ふーん』
興味も示さず、私の席を素通りする。
それを横目に私も自分の作業を進める。今日初めて彼と話をした。どうして彼が話しかけてきたのか、今でもわからずじまい。
『いつも、笹倉君は何してるの?授業終わるとすぐいなくなるよね』
『特に何かしてるってわけじゃないよ。ただ1人で屋上で過ごしてるだけ』
『立入禁止なのに?』
『開いてるんだよなこれが』
相変わらずの投げやりな返答。
コミュニケーション力が無いというより、ただ人と会話するのが億劫なんだな。そう思った。
『どうしていつも1人なの?』
我ながら失礼な質問だなと言ってから気付く。
そんな私の質問に、表情一つ変えない彼はどこか無気力で、自分を見失っているような気がした。
『めんどうなだけだ。いいや違う、怖いだけなんだよな』
『怖い?どういうこと?』
『漠然と、人と触れ合って得たものを失うことが』
『......笹倉くんは何を失ったの?』
『君って結構ストレートに聞いてくるね』
『あぁ、うん。気を悪くしないで?悪気は無いの』
『簡単さ、友達を先月失った。それだけだよ』
彼が暗喩しているのは、つまりそういうこと。
仲の良かった友達を失い、その友達との楽しい思い出が、辛いものに変わってしまった。思い出すことで、同時に苦い記憶へと変わってしまった。
『......ごめん』
『なんで君が謝るのさ。もう終わった事。それをどうするかなんて、俺の勝手だ』
なんて寂しい人なんだろうって思った。
まるで両手でかき集めた砂が、手の隙間から零れ落ちてしまうような弱さ。集めては零して、また集めては零しての繰り返し。
『君こそ……ええと、』
『大槻未遥よ。クラスメートの名前くらい覚えて欲しいわ』
『……アンタは、どうして一人でいるんだよ。容姿もいいし聞くところによると優しい性格してるらしいじゃないか。でも彼氏無しで男はおろか女の子すらも寄せ付けないと耳にしているが』
噂というモノには必ず尾ひれがつく。げんに彼が言う噂にも無いことが混じっていて、だけど彼はそれすらも興味なさげに言い放っていた事に、僅かに腹が立った。
『酷いよー、名前くらい呼んでよ』
『……気が向いたらな』
自分の席の……引き出しを開けて何か冊子を取り出しながら彼はそう呟く。それをそのまま手に持っていたバッグに乱暴にしまうと、来た時と同様に私を無視して横を素通りしていく。
『手伝ってくれないの?』
『あ?なんで俺が日直の仕事を手伝うんだよ。それはアンタの仕事だろ?』
ぶっきらぼうに言った彼の背中は大きく
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