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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十話 ニーズホッグ、又の名を嘲笑する虐殺者
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」
会議室が凍りついた。皆息を凝らしてケスラー少将を見ている。
「で、では」
「おそらく、戦死しただろう」
喘ぐように問い掛けたビッテンフェルトにケスラー少将は感情のこもらない声で答えた。それきりしばらくの間沈黙が会議室を支配した。
「……どうもおかしい、ヴァレンシュタインは何故フィーアの事を知っていたのか……。彼女とのことは十年以上前、ヴァレンシュタインが士官学校に入る前の事のはずだ、それを何故知っている……」
誰も答えられない、おそらく、皆の脳裏に有るのは“知らないはずの事を知っている人間がいる”、その言葉だろう……。
重苦しい空気を払拭するかのようにミューゼル中将が咳払いをした。
「オフレッサー元帥からは他にも話が有った。新宇宙艦隊司令長官にはオフレッサー元帥が就任する事になった」
皆がそれぞれの表情で頷いた。単純な喜びの色は無い。おそらくヴァレンシュタインの予測通りになったことに対して怖れを感じているのだろう。
「要塞駐留艦隊の司令官もグライフス大将に決まった。艦隊がイゼルローン要塞に着くのは大体二ヶ月後になるだろう」
「では我々がオーディンに戻るのはその後ですか」
ミッターマイヤー少将の言葉にミューゼル中将は首を横に振った。
「いや、それは分からない。帝国は早期出兵を考えている、我々はオーディンに戻ることなく反乱軍と戦うという事も有り得る」
皆が信じられないと言った表情で中将を見た。
「まさか……、本気ですか」
俺の質問はかなり失礼なものだったろう、だが誰もそれを咎めなかった。ミューゼル中将もだ。幾分表情に苦みを湛えて言葉を続けた。
「帝国は早期に勝利を収める事が国内安定に、軍の統制を保つために必要だと考えている。出撃にはオフレッサー元帥も同行するだろう。元帥は本気だ、艦隊の練度を上げておいてくれ。次の戦いは負けられん……」
会議を終えミューゼル中将が居なくなった。会議室には未だ皆が残っている。
「この状況で戦うのか、厳しいな」
「無茶だ、到底勝てるとは思えん」
ロイエンタール、ミッターマイヤーの言葉に会議室の中で同意する声が上がった。俺も同感だ、あまりにも危険すぎる。
「出兵よりも国内を変える事は出来んのか、平民達の権利を拡大し、二度とカストロプの一件のような事を起こらないようにする。その方が国内も安定するし兵の士気も上がるだろう。変革の宣言をするだけでも違うはずだ、戦争はその後で良い」
「ワーレン少将の言う通りだろうが難しいな。貴族達は革命は恐ろしいが特権も放棄したくない、そんなところだろう。勝てば状況は好転する、そう思っているに違いない」
ケスラー参謀長の言葉に彼方此方で不満そうなつぶやきが漏れた。
「自分では犠牲を払わず、我々に押し付けようという事です
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