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明日へ吹く風に寄せて
Y.明日へ吹く風に寄せて
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- とこしえに 天つ光の 海原を 駆け行く声に 我は答えん -

 この「招魂祭舞」は、全部で八つ唄から成り立っている。正式には、呼び出す死者の没年と遺品が必要となる上に、舞型はかなり難しい。現状での成功率は、かなり低いと言えるのだ。
 舞手は二人一組で舞台上に紋様を描くように舞わねばならず、失敗したら一からやり直しとなってしまう。
 だがこれが成功したとしても、必ずしも死者が招魂に応じるとは言い切れない。一般的な死を迎えた者であれば問題ないが、事故や殺人などはかなり難しいと言える。
 そして一つだけ、絶対に呼び出せない魂があるのだ。それは…自殺者の魂だ。

- 流れゆく 時の陰に 埋もれしも 我が声を受け 此処へ還らん -

 最後の唄まで滞りなく完成した。しかし…何一つ変わることはなかった。
「どうなっている?舞は完璧だった…。たとえ遺品がなく没年が分からないにしろ、何らかのアプローチがあるはずだが…。まさか…!」
「旦那様。右大臣の息子は…自害されたのでは?」
 その言葉に僕は深い溜め息を洩らしつつ本間へと返した。
「そう考えて然るべきだろつな…。」
 僕の声に、今度は颯太が反応した。
「それじゃ…どうすんだよ。この結界だって、これ以上は保ってられねぇんじゃないのか…?」
 確かに…このままでは八方塞がりになりかねない。春桜姫を滅さなくては、こちらが危険な状態になることは目に見えているのだから…。
「なっちゃん…結界が歪み始めたわ!」
「旦那様、このままでは…!」
 もう悩んでいる余裕は無い…と言うことか。春桜姫には悪いが、こうなってはどう仕様もない…。
 今も結界を破壊しようと鬼の形相で力を放つ春桜姫に、もはや説得なぞ出来ようもない。
 僕としては甚だ不本意だが、ここで彼女を滅せなくては、他に与える影響も桁違いになるだろう。
「結界を解け。春桜姫を滅っする。」
「旦那様、お止め下さい!それでは旦那様の身にも…!」
「夏輝、止めろ!命を削る気か!」
「そうよ、なっちゃん!他にも選択肢はあるはずだわ!」
 三人は僕を止めようと、すごい剣幕で言ってきた。
 それもそのはず…解呪師が仕事を失敗して魂を滅してしまうことがあれば、相手の魂の対価を払うことになる。それは僕とて理解はしている。父もそれで命を落とし、母も共に逝ってしまったのだからな…。
「構わん。これ以上、被害が拡大してからでは遅いからな。本間、春代さん…結界を。」
「出来るわけないでしょ!まだよ…まだ何かあるはずよ…!」
「もう何も無いんだ!これ以上…」
 僕がそう言いかけた時だった。

 チリン…。

「鈴の…音…?」
 それは僕だけに聞こえたわけではなさそうで、皆が音の出所を探すように視線を彷徨わせていた。

 チリ
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