W.花岡春代
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「旦那様は只今来客がおありですゆえ。」
「そんなの私には関係ないわよ!だって倒れて担ぎ込まれたって聞いてきたのよ?だからこうして心配して来たんじゃないの!」
「そう仰られましても、先生にもお見せして大事無いと…」
「そんなの私が決めるわよ!だ・か・ら!そこを今すぐお退きなさいってば!」
あの彌生さんをたじたじにさせるとは…。そんな芸当が出来るのは、八分家でも一人しかいないな…。まぁ、この強引さがなければ、あの家を引っ張ることなど出来ないだろうが。
未だ廊下で大声を出しているのは、花岡家の当主である花岡春代さんだ。全く、あれで当主なのだから世も末だ。
「颯太、行け。」
「俺かよ!」
「無論だ。僕はいらぬ火の粉を浴びたくはないからな。それに僕が自ら出向いたら、彌生になんと言われるか…。なぁ、颯太?」
「な…!分かったよ!行けはいいんだろ!」
良い返事を返し、颯太は廊下へと出て行った。
「あら?颯太じゃないの。来客ってば、もしかしてあなたのこと?それじゃどうでもいいじゃないのよ!」
「春代さん…相変わらず口悪いですね。」
「そんなに誉めないでよ!」
「誉めてねぇよっ!」
あぁ、颯太まで巻き込まれている。春代さん、こうやって皆を揶揄うのが大好きだからな。困った性格だが、八分家の中ではかなりの力を持っている。解呪師としては、僕と叔父の樟冬久に次いで三位の実力があり、女性で唯一の解呪師だ。
「私はなっちゃんとお風呂入ったことだってある仲よ?羨ましいでしょ?」
「俺だって夏輝と風呂くらい入ったことあるって!」
「あらやだ!颯太のエッチ!」
「誰がエッチだ!」
いつもながら、全くとりとめもないな。仕方なく、僕は部屋の中から「コホン…」と咳払いすると、障子戸を開けてそれを止めさせた。
この二人、一体何しに来たのやら…。僕は深い溜め息を洩らしながら、渋々二人を部屋へと招き入れ、疲れ果てている彌生さんにお茶を持ってくるように頼んだのだった。
「で、春代さん?貴女はなぜここへ?」
「だって、愛しのなっちゃんが倒れたって…けぃちゃんが携帯で教えてくれたから。」
春代さんの言っている「けぃちゃん」とは、運転手の本間のことだ。フルネームが「本間圭二」だからだ…。無論、「なっちゃん」とは僕のこと…。いい加減、この呼び方は止めてほしいと思うのだが、春代さんは全く耳を貸さないのだ。まぁ、本間は春代さんとは同級生だから、春代さんが偶然連絡入れた時にでも話してしまったんだろうがな。
「ま、それはそれとして…。春代さん、貴女が本家に顔を出すからには、見舞いと言うわけではないのでしょ?何かありましたか?」
「あ…そうそう、これお土産ね。」
「人の話聞けよ!」
はぁ…。春代さんは颯太の突っ込みを待っているように見えてきた…。しか
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