W.花岡春代
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様の前で何ですか!」
この声に、言われた二人は慌てて姿勢を正した。彌生さんは滅多に怒らないが、怒らせると誰よりも恐い存在でもある。
この二人も以前、一度だけ彌生さんを怒らせて、四時間近く説教されたことがあった。多少のことは多目に見るものの、僕や仕事に関しては容赦しないのだ。当たり前と言えば当たり前の話ではあるが。
「しっかりして下さらなければ困ります。今もお仕事の最中なのですから、気抜かりなぞあっては困るのですよ?」
「はいっ!」
二人は先生に叱られた生徒のようで、思わず笑いそうになってしまった。普段はこんな殊勝な態度は見せないからな。
「まぁ、彌生さん。そのくらいにしておいて、お茶をくれないかな?」
「これは失礼致しました。」
誰か止めに入らないと、このまま彌生さんの説教が始まってしまいそうだったので、苦笑しながら僕は言ったのだった。
「今日はアールグレイか。ん?いつもとは少し…」
「はい、旦那様。これは本日、イギリスの秋吉様より届けられた品にございます。」
「そうか…。大伯父に礼をせねばな。彌生さん…」
「分かっております。いつものように、風華亭の菓子を返礼としてお出し致します。」
「頼みましたよ?」
「畏まりました。それでは失礼致します。」
僕と彌生さんの会話を、二人はじっと黙して聞いていた。何か言っては、また説教をくらうのではないかと恐れていたようだ。そして彌生さんが退室して暫く後、颯太が恐る恐る口を開いた。
「はぁ、またやっちまったよ。それもお前が悪いんだかんな!ったく、仕事も大変だってのに…。」
「あらやだ!仕事なんてやっていたの?てっきり私、金持ちの道楽だとばっかり…。そんなんでなっちゃんを危険に晒すなんて、全く困りものですわよねぇ。」
「うっせぇよ!それは彌生さんにも言われたっての!そんなことよか、これからどうすんのかって方が先だろうが!」
「颯太が言うと、まるで逃げてるようにしか聞こえないんだけど?」
また始まった…。これには僕も少々腹に末かね、目の前でくだらない言い争いをしている二人に向かって怒鳴った。
「いい加減止さないか!二人共、ここへ一体何をしに来たのだ!?全く話が進まない。まともに話が出来ぬのならば、早々に出ていってくれ!」
僕が怒鳴った後、二人は目を丸くして暫く動かなかった。そして静かに僕の前へと正座し、身を正して言ったのだった。
「申し訳御座いません。」
「御無礼致しました。」
先程とは打って変わって、今度はまるで家臣のような態度を取った。まぁ…当たらずと言えども遠からずだが、こういうことでもない限り、この二人からこんな言葉が出てくることなぞないからな。何だか新鮮な感じがして良かったが、今はそんなことを感じている余裕などないのだ。
「さてと、今後のことを考える
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