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明日へ吹く風に寄せて
W.花岡春代
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し、僕は前に差し出された桐箱を見て、思わず目を疑ってしまったのだった。
「春代さん…これ…。」
「うん。白法院所蔵の“白虎の帯"と、常善寺所蔵の“玄武の鈴"よ。」
 何と言って良いか分からず、暫くは唖然とした。
 事情を把握している北の寺社なら兎も角、関係のないところから借り受けてくるなんて…。いくら花岡家は顔がきくと言っても、これは超人と言わざるを得ない…。
 僕も颯太も目を丸くして春代さんを見ていると、天狗になった春代さんはとんでもないことを口にしたのだった。
「寄付するの止めよっかなぁって言ったら、すぐに貸してくれたよ!話が早くて助かっちゃった!」
 前言撤回…悪魔だ…。僕も颯太も溜め息を吐き、げんなりとして俯いてしまったのだった。
 要は脅したと言うことなわけで…。ただでさえ、花岡家は莫大な資産があって力も強大。そんなとこの当主に「寄付止める」なんて言われれば、まるで「今から敵になってもいいよね?」みたいに聞こえてしまうだろう…。それでは貸さぬとは到底言えないと思う…。
「まぁ…何にせよ、助かったよ。」
「なっちゃん、千年桜のとこに行ったんでしょ?」
「ああ。本間に聞いたのか?」
「違うわ、水鏡で見たの。けぃちゃんはそこまで詳しく教えてくれなかったし。水鏡じゃなかったら、こうして六宝装を借りてこれなかったしね。」
 忘れていた。春代さんは水鏡の使い手だったな。
 その時、今まで黙っていた颯太がムスっとした顔で言った。
「だったら早く知らせりゃ良かったじゃんか!」
 春代さんはそんな颯太に「チッチッチッ!」と人差し指を立てて言った。
「安易に未来視を話しちゃダメなの!特にこれは“呪"が関係してるから、下手に言ったら大変なことになったかも知れないからね。話して最悪のパターンになることだって、結構多いんだから。」
「いちいち子供扱いすんなっての!ま、そちらは五歳も違えばオバサンだしなぁ…。仕方ねぇのかもなぁ。」
「オ…オバ…」
 颯太は言ってはならぬことを言ってしまった。春代さんが壊れてる…。
「は…春代さん。それで、そちらの家の様子なんかは…」
「オバ…オバ…」
 うん…これは少しヤバいかも知れないな…。
「オバ…オバサンですってぇ!?」
 余りの壊れっぷりに、さすがの颯太もたじろいでしまった。この人を怒らせると怖いのは、颯太も知っている筈なんだがなぁ…。
「あっ…。俺、ちょっと用事を思い出したから…。」
「お待ちなさいな…。」
 部屋から出ようとする颯太の肩を、春代さんの手ががっしりと掴んだ。春代さんからは、何だか黒いオーラが噴き出しているようにさえ見えていたが、間が良いのか悪いのか、そこへお茶を運んで来た彌生さんが一喝したのだった。
「お二方、いい加減になさいませ!それも本家当主であられる夏輝
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