U.行方颯太
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、これから六宝装を借り集めてこい。」
「はぁ!?ありゃ国宝級の代物だぜ?依頼主の満天大社の“青龍の衣”だって、ぜってぇ無理に決まってるって!」
僕が言った「六宝装」とは、平安末期に作られた舞のための装束だ。その一つ一つには強力な霊力が宿り、それを身につけたものは全ての魔に打ち勝つと伝えられている。
誰がどのような目的で製作したかは知られていないが、そのどれもに美しい装飾が施されているため、文化・芸術的な価値も非常に高い。そのため、六宝装を所持している五つの寺社は一般公開すらしていないのだ。
「五つ」と書いたが、六宝装の一つ“麒麟の下駄”は、現在僕が所持しているのだ。
「ま、颯太がそう言うのも分かる。それじゃ、一度千年桜のところへ行くとしようか。必要か否か、力を確かめれば分かるだろうしな。」
「俺も行くのかよっ!?」
「文句は言わせないよ?天満大社の依頼は君が持ってきたんだしね。それに…」
「分かった!それ以上言うなっ!」
颯太はそう言うなり、一人ドカスカと部屋を出て行った。
「さてと…。出ますかな…。」
颯太が出て行った後、僕は静かにそう呟いて身支度を始めた。解呪師としての仕事は、全て舞装束で行うのだ。
「旦那様、足袋と扇をお持ち致しました。」
僕が着替えを終えたのを見計らったように、彌生さんが必要なものを持ってきてくれた。仕事に出ることを、颯太から聞いたのだろう。
「ありがとう、彌生さん。颯太はどうしている?」
「玄関にてお待ちです。」
「そうか。では、直ぐに出る。」
足袋を履き終えて扇を手にすると、僕は部屋を後にした。玄関へ行くと、颯太は鼓と鈴を用意して待ち構えていたのだった。
「さっさと行くぞ。」
「ああ。」
そうして僕達は玄関を出た。外には車が回してあり、直ぐに出発出来るようになっていた。
「旦那様、お気をつけて。」
「留守は頼んだよ。」
外は快晴だというのに、何故か風は湿り気を帯びて重く感じる…。向かうは町の東にある千年桜。
- さぁ、行ってやるよ。 -
僕は心の中でそう呟くと、颯太と共に車へと乗り込んだ。
しかし、この胸騒ぎは何だろう?そしてふと、夢の女性の言葉が頭に過った。
- 千年の時を経ようとも、私は貴方を許せぬでしょう…。 -
“貴方"とは誰のことなのだろうか?それを知る術はあるのだろうか…?
車中でそう考えていたものの、僕達は未だ事態の最悪さに気付いてはいなかった。
そう…何も…。
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