U.行方颯太
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上がってほしいと申しておりますのに。」
僕が考え事をしていると、スコーンを持って彌生さんがやってきた。
「済まないね。僕は少し冷めてからではないと飲めないのだよ。」
「珈琲はお飲みになれますのに?」
「………。」
沈黙が続いた。それから暫くして、颯太のやつが笑い出したのだった。
「いやぁ傑作だよ!」
そう言いながら笑い転げる颯太を見て、僕と彌生さんは大きな溜め息を吐くのだった。
朝食を食べ終えて、僕は颯太を連れて私室へと入った。颯太が持ってきた情報を細かく聞くためだ。
「そのことなんだが、六人は病気や怪我で此花町総合病院へ入院してるんだよ。取り敢えず話を聞いてきたんだが…。」
「で、共通点はあったのか?」
「あるにはあった。先祖に天皇家に関わる人物がいるってのがそれだ。」
それを聞いて、僕は顔をしかめた。分かったとして、天皇家に関することを調べることなど容易ではない。それも、ある程度まで絞り込めればどうにかなるが、あまりにも幅が広すぎるのだ。
「それで千年桜を併用して考えたんだが、あの蓬莱寺跡は昔の貴族の別邸だったんだろ?だったら、そこらへんから分からないかなぁとか思うわけだ。」
「気楽に言ってくれる。確かに、あれは貴族の別邸だったが…天皇家からはかなり離れた家柄だったはすだ。調べても何もないと思うがなぁ…。」
僕がそこまで言うと、颯太はあっと言う顔をして言った。
「これと関係ある依頼があったんだ!」
「こんなときに依頼か…。で、どこから持ってきたんだ?」
先にも話してあるが、僕は“解呪師”なのだ。依頼が無くては仕事にならないし、言ってみれば颯太はマネージャー的なこともしている。それでこうして依頼を持ってくることもあるのだ。
「依頼主は、東方満天大社だよ。」
僕は少し戸惑った。あそこの宮司は、かなりの力を持っているはずだ。櫪家の力を借りなくとも解決出来ると思ったのだ。
しかし、そうも言ってられない理由があるらしかった。
「夏輝の考えも分かるぜ?だがな、あの満天大社にある桜なんだが、あれって千年桜から枝分けしたもんなんだってよ。なんでも、今から百三十年ほど前に植えられたとか言ってたなぁ。それでな、その桜が五月も終ろうかって今に、意味もなく狂い咲いてるんだ。」
「そういうことか…。」
こちらの千年桜の件が解決出来れば、恐らく満天大社の桜も収まるだろう。
しかし…あの夢の女性の正体が分からなくては、こちらから手の出しようがない。聖域たる天満大社の桜さえ狂い咲かせるだけの力…。それほどの狂気…。
…チリン…
「鈴の音が…。」
「はぁ?なんも聞こえないぞ?」
これもあの女性の仕業なのか?僕に一体、何を望んでいるのかは分からない。だが、何かがあるのだろうことは確かだ。
「颯太。君
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