U.行方颯太
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翌朝、いつものように身支度を整えて寝室を出た。この日も快晴で、青空には白い雲が浮かび、その下では小鳥が囀ずる長閑かな朝だった。
「お早うございます。」
食堂へ入ると、使用人達が挨拶をしてきた。相変わらずの朝の風景だが、この日は少し違っていた。
「颯太…どこから入ってきたんだ?」
食卓には、既に見知った顔があったのだ。
それは…友人の行方颯太だった。
「ん?玄関から入ったに決まってんだろ?」
ちゃっかり朝食を食べてる図太さは、こちらも見習うべきなのだろう。
「君、全く連絡が取れなかったと聞いていたが…?」
「気にすんなって!こっちにだって野暮用ってのがあってな。櫪からの着信を見て、こうして来たんじゃないか。」
「で、飯を食っていると?」
全く…何を考えてるのか…。まぁ、昔からこうなのだから、今更ながら言う言葉もないか。
「ケチケチすんなよ。」
「君のが余程ケチだろうが!」
「俺のケチは美徳だ。夏輝のケチとは質が違う!」
ここまでくると、もはや意味不明だな。こいつは一体、どんな思考回路をしてるのやら…。
頭を抱えて諦め半分で席に着くと、彌生さんがサラダとスープを運んできた。
「本日はスコーンを焼いてございます。」
「そうか。では、カシスのジャムがまだあったな。それで二つ頂くとしようか。」
「畏まりました。」
彌生さんはそう言うと、直ぐ様その場を離れた。
基本的に、朝食は和食と洋食が交互に出る。夕食はその逆パターンとなり、きちんとした栄養バランスを考えて出されるため、健康にも良い上に飽きがこないように工夫されている。彌生さんには頭の下がる思いだ。
「彌生さん!スープのおかわりある?」
あぁ…こんなのが友人とはなぁ…。ま、こんなんでもやるときはやる男だ。この櫪家の中でも、颯太ほどの情報収集が出来る人材はいないからな。
「そうだ。夏輝、俺を呼び出したってのは、千年桜のことでだろ?」
「ご明察だ。君のことだ、もう何かを掴んでいるんだろ?」
「まぁな。っても、週刊誌や新聞よりはってくらいだ。」
颯太がこう言う時は、かなり話がややこしいということ。要は収集した資料が穴だらけと言うことだ。
「千年桜に続く小道で、二十歳前後の男たちが幽霊に襲われたと言う話は知ってるよな?」
「ああ。昨日、久居君が興味深々に語っていたからな。」
「そいつらなんだが、どうも呪詛をかけられてるみたいなんだ。」
「呪詛…だと?」
幽霊に襲われた上に呪詛とは…。これは一筋縄ではいかないようだ。連続して姿を現す幽霊と、僕の夢に現れる女性は同一と見て間違いはないだろう。
ただ…一体何を言いたいのかが不明だ。かなりの恨みを残しているのは確かだし、殺されたことは想像に難くない。
「旦那様、スープは温かいうちに召し
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