暁 〜小説投稿サイト〜
勇者番長ダイバンチョウ
第19話 命を懸けた脱走! 昨日の敵は今日の友
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の命令はない】
「じゃ、何でだよ?」
【決まってるだろ。脱獄だ】
「はぁっ!?」

 まさかの発言に思わず番とバンチョウは目を大きく見開いた。イインチョウの性格からして一番有り得ない発言だった。
 囚人を脱獄させるなど正義を重んじる彼からはまず聞ける発言ではない。

「どう言うつもりだよ?」
【偶然看守の話を聞いた。お前は明朝・・・処刑される】
「何だと!?」
【どうやら、連中はお前を処刑し、その際に地球で起こったいざこざを全てお前に押し付けるつもりだ】
「死人に口なしって奴かよ。正義の宇宙警察のやる事かそれが?」
【・・・お前の言う通りだ。私は今まで、正義は宇宙警察にあると思っていた。だが、違った!】

 イインチョウの語尾が強張る。
 其処からは凄まじいまでの怒りが感じられた。正義を重んじ、弱者に対し常に賢者の如く手を差し伸べて来た彼が、今激しく怒っているのが分かった。

【結局、宇宙警察もゴクアク組と同じように悪だったんだ。今この場に正義は存在しない。私の信じていた正義は悪の上に被さった皮の薄い正義でしかなかったんだ】

 さっきまで怒っていたイインチョウは今度はすっかり沈み込んでしまった。今まで自分の心の支えになっていた正義、その正義が瓦解したが為の落胆だった。

【私は迷ったよ。このまま宇宙警察に留まり続ける事。それ即ち悪! だが、お前と共に地球に降り立ったとしても、それは悪! どちらの道も悪でしかない。ならば、後はどちらの悪の道に進むか・・・それだけなんだ】

 悪と悪―――
 この地球と言う場所に正義など存在してはいなかった。
 あるのはただ、悪と悪との闘い。それしか存在していなかった。
 となれば、どちらかの悪の道に進むかしかない。

【だから、私は決めたんだ。どの道悪の道へと進むのならば、人の命を救える悪の道へ進むべきなのだと・・・と】

 音を立てて鉄格子が開かれた。開かれた牢獄からのっそりとバンチョウは外へ歩み出る。久しぶりの外だとばかりに背伸びして腹いっぱいに空気を吸い込む。

「かーー、やっぱ娑婆の空気は違うぜ。っつっても、まだ獄中の中なんだけどな」
【無駄口をする暇はない。さっさと出るぞ。看守達には睡眠薬入りのオイルを配ったから今頃は爆睡中だろうが直に交代要員がやってくる。そうなれば誤魔化しは利かなくなる】
「わぁってるって」

 言われなくともそのつもりだった。
 現状で宇宙警察の連中とやりあうのは分が悪すぎる。一応イインチョウのくれたエネルギーキューブである程度は回復したのだろうがそれでもある程度でしかない。
 また近い内に燃料切れを起こす危険性すらありえる。
 そうなれば今度こそ一巻の終わりだ。

「まずは俺の番トラを見つけねぇとな。ダイバン
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ