花園の章
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ミヒャエルはアンドレアス、十二貴族次期当主達ら仲間と共に、ルツェンより二日で王都プレトリスへと入った。碧桜騎士団は団長のルドルフを失って、その内情は殆んど機能していなかったため、ヘルベルトにこの軍勢を止めることは出来なかったようであった。
さて、ミヒャエルらが王都へ入って初めに目にしたものは、家々に国旗を掲げて喪に服す人々の姿であった。どうやらヘルベルトは、王都に住まう者達には国王の崩御を告知しているようである。
しかし、ミヒャエルはこれに違和感を感じた。ヘルベルト自身、自ら権力を握りたければ、国王が生きていると思わせていた方が都合が良いのではないかと考えたのである。
だがそれだけではない。封鎖されていたこの王都は、既に物資が不足している筈であったが、どう見てもその様な風には見えず、寧ろ今までよりも豊かになっているように見えたのであった。
「これは…どういうことだ…?」
ミヒャエルは小さく呟いた。
一方では悪辣非道な行いをし、また一方では人々のために尽力している。この矛盾は、一体何を意味しているのであろうか?
「アンドレアス。君はどう思う?」
後ろに下がっていたアンドレアスに、この状況がどう映っているのかミヒャエルは尋ねた。
「王よ、私には計り兼ねます。この国には現在、大きな隔たりがあるように思え、それが何を意図しているのか…。本人に尋ねるしかないかと存じます。」
アンドレアスの答えは、ヘルベルト自身に問うしかないと言うものであった。ミヒャエルもそれしかあるまいと考え、皆を連れ中央にある王城へと向かったのであった。
王都内は喪に服していることもあり、さして人は居なかった。その中でミヒャエルは、兵士達を四つつに分割して城の四つの出入口を固めさせていた。その指揮を任せたのは、あのヅィートレイ・キナンであった。
「ヅィートレイ、後は頼んだ。」
「陛下、どうか御無事で。原初の神の加護があらんことを。」
ミヒャエルはヅィートレイとそう言葉を交すと、アンドレアスと十二貴族次期当主達を連れて王城へと入って行ったのであった。
「誰も…居ない…?」
城へ入ったミヒャエルらは、その不可思議な現実に戸惑った。城の中には警備兵はおろか、誰一人見い出すことが出来なかったのである。王の家臣達もそこで働く召使達さえも、誰一人居なかったのである。
「王城としての機能が完全に止まっていると言うのか?一体どうして…。」
ミヒャエルはその異常なる雰囲気に眉を潜め、同じく訝しがるアンドレアスや十二貴族次期当主達と顔を見合せて先を急いだ。
このプレトリウスの王城であるが、モルヴェリやリチェッリなどの城と比較すればかなり小規模な造りである。敷地の四隅の外壁と繋がっている塔を含めれば外観は大きく感じはするが、本体は必要不可欠なものしか取
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