花園の章
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中で早くこの争いが終ることを切に願ったのであった。
その日の昼過ぎに、ミヒャエルらは到頭ヘルベルトの待つシュアの町へと辿り着いた。しかし、ここまで何事もなく辿り着けたことに、ミヒャエルは疑問を抱いていた。ヘルベルト配下の碧桜騎士団であれば、早い段階でヘルベルトへと情報を持って行き、何らかの妨害工作を行える筈だと考えたのである。
たとえ団長が居なくなろうと、副団長が指揮を取れば良いだけの話なのだ。それがルツェン以来、全く沈黙しているのが不気味でならなかった。
「やけに静かだとは思わないか?」
ミヒャエルは直ぐ右隣を馬に乗って付いていたナンブルク公子、ティート・アーレス・フォン・ネーゼスへと問い掛けてみた。
「はい…。ここまで何も無いことといい、何か裏があるように思えてなりません。ヘルベルト王子とて、我らがここへ向かっていることを知っているはず…。用心するに越したことはないでしょう。」
ティートはミヒャエルにそう答えた。他の皆もそう思っているだろうことは、聞かずとも伝わっては来ていた。しかし、何故にミヒャエルがティートへ問い掛けたかと言えば、このシュアの町がナンブルク地方に隣接しているからである。何か大事があった際、ナンブルクは真っ先に被害を被りかねないのである。ティートは次期当主たる身であり、ナンブルクへ火の粉が飛ばぬよう防ぎたいのが心情である。
ミヒャエルとて決して他人事ではなく、それは他十名の次期当主達にも言えることである。彼らもまた、その顔に緊迫した表情を表し、この先どう動くべきかを考えているようであった。
「王よ、よくぞ参られました。」
その様な緊迫した中に、一人の人物が姿を現して皆を驚かせた。その人物とは、今まで姿を消していたベルディナータであった。
「ベルディナータ!君が何故ここへ居るのだ!?」
ミヒャエルは彼女の神出鬼没な行動に、少々困惑させられた。彼女は常に様々な場所を巡っているようで、ミヒャエルにとっては最大の情報源でもあった。
だが、ベルディナータ個人についてミヒャエルは殆んど知らないのである。彼女はただの料理人であり、それ以外は全く分からない。ただ、ベルディナータはミヒャエルの周囲に現れては知らぬうちに消え去って、それが何なのかをミヒャエルは考えぬ様にしていたのであった。いかな馬を使ったとしても彼女の行動は速すぎ、人のそれを逸脱していると…。ベルディナータはそれを知ってか知らずか、ミヒャエルの前で礼を取って言った。
「この町に危険は全く御座いません。」
「危険は…ない?では、このシュアに兄上は居ないのか?」
「いいえ。ヘルベルト王子はこちらへ居ります。ですが、彼にもう貴方に反抗する意思は御座いません。」
「…?」
ベルディナータの答えに、ミヒャエルも次期当主達も首を傾げた。
確か
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