花園の章
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、汝等の王の元へ赴き、共に結果を見届けよ"と。」
「叔父上がラタンへ?」
「はい。トビー殿が気掛かりだった御様子で、爵位を御長男様にお預けになって参られたと。」
「そうか。して、何故にご夫妻を?私としては嬉しい限りだが、ここよりもラタンの方が安全であろうに。」
ミヒャエルは不思議そうにレヴィン夫妻へと問った。だが、ミヒャエルがそう問ったのも無理からぬことである。ここは謂わば、何が起こっても不思議ではない危険な場所と言える。戦場と言っても、決して過言ではなかろう。そこへ楽士が来るなど考えられぬことであり、ミヒャエルの叔父ルーン公もその点は充分解っていたはずである。
そんなミヒャエルを察してか、後方で控えていたエディアが言った。
「陛下。私達は考え無しに陛下の元へと赴いた訳では御座いません。ルーン公様は陛下を大変案じておられ、私達に畏れ多くも陛下の友人として陛下の力になるよう仰せになられました。故に、私達にこれを陛下へと持って行くよう申し付けられ、私達はこれと共に赴いたのです。」
エディアがそう言うと、ヨゼフとエディアは脇へ退き、馬車の中をミヒャエルへと見せたのであった。
「これは…!」
ミヒャエルが中を見ると、そこには鉢へ植え替えられた白薔薇が幾つもあった。
「ルーン公様と、共にラタンへこられていたヴェヒマル大聖堂の大司教マンフレート様が神へ讚美を捧げながら植え替えたものに御座います。この騒動が収まった後、これを王城の庭園へと植えてほしいとのこと。」
前にも語ったが、この白薔薇は邪なるものを退ける神聖な力を宿している。故に、余程のことが無い限り人々はこれに触れようとはしないのであった。自らに一片の邪心も無いと断言出来る者が、果してどれ程居るであろうか?
この白薔薇は、触れれば邪な者は即座に命を落とすと言われいるのである。人々は信仰はあっても、自らが完全に清らかであるとは言えず、故に白薔薇を恐れの対象としても見ていたのであった。
だが、ルーン公はそれを知っていて尚、ミヒャエルのためにと自らの手で白薔薇を鉢へと植え替えたのであった。
「叔父上…。」
ミヒャエルは叔父の優しさに感謝した。そしてその優さに大いに力付けられたのであった。
ルーン公にとってミヒャエルは、王子や王といった権力の肩書きではなく、可愛い甥であり、大切な家族なのであった。故に、レヴィン夫妻とてそう言った肩書きなどではなく、純粋に友としてここへ赴いてきたのであるとミヒャエルは分かっていた。そこへいくら言葉を重ねようとも、全く意味を成さぬのである。ただ、心より感謝するだけであった。
「ご夫妻、来て頂いて嬉しいです。」
「私達も貴方様に会えて嬉しく思っております。今宵は私達が楽を奏で、一時でも心が安らげば私達の来た甲斐があると言うもの。貴方様も今宵は
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