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SNOW ROSE
花園の章
Z
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るため、いつ国外からの侵入者に奪われてもおかしくはない状態である。故に、ミヒャエルは念には念を入れたのである。
 当時の情勢は、ヨハネス公国とリチェッリ王国との同盟はあったにせよ、かなり緊迫した状況であった。その上、東のモルヴェリ帝国が軍隊を増強し始めており、プレトリウスにとってはかなり過酷な状況に陥る可能性が高かったのある。ミヒャエルは一刻も早くこの事態を解決し、王として国を強化し、民を護れるよう策を講じねばならなかった。
 だが、いくら一人で急いたところで、周囲は急には動けぬのが現状と言えた。皆を急かし疲弊させようものなら本末転倒と言うものであろう。ミヒャエルは自らの急く心をなだめ、皆が疲れ果てぬように心を配り、ヘルベルトのいるシュアへと前進したのであった。
 さて、ミヒャエルらが王都を出発して二日の後、何事もなく順調にシュアへと近付いていた。
「皆よ、止まれ。」
 日が傾いて辺りに影が差した頃、ミヒャエルは皆の足を止めて言った。
「今日はここで野営とする。湖の近くにて準備せよ。」
 ミヒャエルがそう言うや、皆は直ぐ様動きだし、無駄のない動きで野営の支度に取り掛かったのであった。
 ミヒャエル自身はこの後をどう動くか話し合うため、一本の大木の下に十二貴族次期当主達を集めた。そして話しをしようとした時であった。遠くより馬車の走ってくる音が聞こえたため、ミヒャエルは不審に思い見晴らしの良い場所へと移動した。
「この様なところへ…一体誰が…?」
 一人呟くようにミヒャエルは言った。最初は行商人か急いでいる旅行者位にしか考えてはいなかったが、馬車が近付くにつれ、それが誰なのか分かったのであった。
「あれは…ワッツではないか…。」
 遠目ではあったが、それはミヒャエルの知る青年であると分かった。
「アンドレアスの話しでは…確かラタンへ留まっている筈…。それが何故…?」
 ミヒャエルがそう呟いているうちに、馬車は野営を整えている場所へと入ってきたのであった。
 ミヒャエルは直ぐ様馬車へと駆け寄り、馭者台へ座るワッツへと問い掛けた。
「ワッツ、一体何事なのだ?」
「陛下、お久しぶりに御座います。目上よりご無礼御許し下さい。私はお二方を陛下の元へとお連れするようルーン公様に申し付けられ、陛下の元へと遣って参りました。」
 ワッツがそこまで言うと、馬車よりその二人の人物がミヒャエルの前へと降り立った。その二人を見て、ミヒャエルは目を丸くしたのであった。
「レヴィン夫妻!どうしてこの様な場所へ!?」
「陛下、私達は旅楽士に御座います。元来、一つの場所へ留まっている者に御座いません。」
「それは分かるが…しかし…」
「ここにあるのは、ルーン公様の願いでもあります。ルーン公様はラタンへと入られ、その折に私達にこう言われました。“楽士よ
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