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SNOW ROSE
花園の章
Z
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フにとっては、この紋章を貶すことなど出来ようはずもなかった。
 マルスが世を去った後、この剣の所在はながらく知られておらず、故にレプリカを作って宝剣として戴冠式のみに使用していたのであった。無論、奪われた宝剣とは、このレプリカのことである。しかし、レプリカには現王家の紋章が刻まれ、全く同じには作らなかった。そのため、ミヒャエルが下げている剣は、一目で本物であるとクリストフは気付いたのである。故に、クリストフはその剣を持つミヒャエルにおののいて頭を垂れようとしたのであった。ミヒャエルはそれを見て言った。
「クリストフ、我や剣に頭を垂れてはいけない。汝は原初の神に平伏して赦しを乞うべきだ。」
 ミヒャエルの言葉に、クリストフは今まで自分のしてきたことの無意味さを痛感し、その場で原初の神へと平伏して祈ったのであった。
 暫し後、クリストフはミヒャエルらへとヘルベルトの居場所と、王都の民や兵達、そして王妃や側近達がどうなっているかを話した。
「民の多くはシュアの町へと行っております。ヘルベルト様の指示により、そこで働いているのです。民には相応の代価と食事を与え、不自由なく暮らせるように取り計らっております。兵達はその先で民とは別の仕事をしており、王妃様方は別の街にてお過ごしです。ヘルベルト様は今、シュアにて仕事の指揮を執られているはずです。」
 クリストフの話しは最初、誰一人信じる者は居なかった。話しの中でも、外のヘルベルトの印象からは程遠く、暫く皆は顔を合わせて訝しがっていた。
 それ以上に、皆が集まってこの王都へ来た最大の理由は、そのヘルベルトの横暴にあるのである。仮にクリストフの言葉が真実だとすると、何故にヘルベルトは王都外に自分を悪辣な人物だと思わせたのか?何故に碧桜騎士団まで組織して、あのような非道な真似をさせたのか…?
「皆よ、我が兄上の元へ行こう。そこで全ての答えが解る筈だ。」
 ミヒャエルがそう言うと、皆は頭を垂れてミヒャエルの言葉に従ったのであった。無論、クリストフも礼を取り、彼はその後のために王都へアンドレアスと共に残ることになった。クリストフは全く咎めを受けないわけではないが、ミヒャエルはことが終結するまで罰することはしないと言ったのである。要は、ここでの働きにより罪を軽くすることも出来ると言うことである。
「アンドレアス、王都のことは頼んだぞ。」
「王よ。我が国を想う心にかけて。」
 アンドレアスはミヒャエルへ礼を取ると、クリストフを連れて外で待つ兵達のところへと向かった。アンドレアスへは北に配置していた兵を任せ、ミヒャエルは東の兵達を同行させることにした。残る南の兵達はリカルドに、西の兵達はヅィートレイ・キナンへと任せ、この二つの隊には王城の警護をさせるようにしたのであった。
 王城は主不在の空城となってしまってい
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