花園の章
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えたのであった。則ち、ミヒャエルを決して見放さず、万が一王が邪な路へと進もうとした時は必ず連れ戻すという覚悟の表れでもあった。
ミヒャエルはその対応から己の小ささを感じ、またこれから先、この国の王に相応しくなるべく精進せねばならぬと身を律したのであった。
「皆よ。私は聖エフィーリアより賜りし白薔薇を信ずる様に、集いし皆を信ずる。故に、皆はこれから先、私が路を見誤らぬ様に見張っていてほしい。私は私の意思で、ここに集う十二名に決議による王権剥奪の権利を与える。それは元老院の権限よりも強く、王には拒否出来ぬ不可侵の権利とする。皆よ、この国のために尽してほしい。」
ミヒャエルのこの発言に皆は暫し戸惑ってしまったが、直ぐに頭を垂れてそれを受領したのであった。
これは歴史上稀な王権より上位の権限である。しかし、この権限は結局、一度も使用されることはなかったのであった。
さて、気力を失って茫然としていたクリストフには、その後ミヒャエルから犯した罪への処罰が伝えられた。
「クリストフ。汝はその家系故に、義しき道より逸れてしまった。だが、それは多かれ少なかれ誰しにも起こり得ることでもある。」
「私は…ただ、祖先の栄光を取り戻したかっただけだ…。」
「それは違う。汝の祖先は王家の腐敗ぶりに我慢ならず、自ら王家やそれに伴う地位を棄てたのだ。それは勇気ある行動であり、汝もその勇気を知るべきであったのだ。」
「私には最早…その様な思いなどない。全て失い、私はただの老体に成り果てたのだ。その上、この私に何をしろと言うのだ?」
クリストフは光を喪った瞳でミヒャエルを見た。ミヒャエルはそんな彼にこう言ったのである。
「自ら犯せし罪は、自らの手で贖うが良い。罰せられるに委せるのではなく、罪の重さと同等の働きを持って償うのだ。」
「その様な戯れ言を…」
クリストフはミヒャエルの言葉を鼻で笑って否定しようとしたが、途中で言葉を切って黙り混んでしまった。それは、彼が今まで気付かなかったミヒャエルの剣の紋章に気付いたからである。そこへ刻まれた紋章は、クリストフには覚えがあったのだ。
「その紋章は…!まさか…失われていた筈の…」
クリストフは顔を蒼冷めさせて呟いた。ミヒャエルが今腰に差している剣は、所謂<聖マルスの剣>なのである。それには二重の意味があり、一つは現王家の祖たる旧王家の紋章を扱えるのは国王のみであること。故にこの剣は、国王と認められた者にのみ持つことを許されているのである。第二に、これは<聖人>であるマルスの剣であり、そのマルスが現王家が衰退していた時に現れ、そして国を救ったのである。その聖マルスは旧王家の直系であり、その剣は現王家にとってはかけがえのない至宝なのである。旧王家はクリストフの祖先よりも遥かに古い血筋であり、血筋を重んじるクリスト
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